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うつ病・適応障害は労災になる?精神障害の認定基準と弁護士相談のポイント


長時間労働やパワハラ、セクハラなどの仕事上のストレスをきっかけに、うつ病・適応障害などの心の病を発症した場合、労災が認められる場合があります。

目次
ウサラ

心療内科で適応障害って診断されました…
でも、労災ってケガのときだけですよね?

にゃソラ

そう思っている人は多いです。
でも、うつ病や適応障害などの精神障害も、仕事が原因なら労災になることがあります。

ウサラ

でも、わたしが弱かっただけかもしれないし…

にゃソラ

そこは一人で決めつけないでください。
労災で大事なのは、「弱いかどうか」ではなく、仕事による強いストレスがあったかどうかです。

うつ病・適応障害などの精神障害も、労災になる可能性があります

 長時間労働、パワハラ、セクハラ、過重な責任、職場でのいじめなど、仕事による強いストレスが原因で精神障害を発病した場合、労災と認定されることがあります。
 ただし、「仕事がつらかった」「上司が嫌だった」というだけで認められるわけではありません。発病前おおむね6か月間の出来事を、厚生労働省の認定基準に沿って整理する必要があります。

 労災と聞くと、仕事中の事故でケガをした場合の保険とイメージしている方が多いかもしれません。ケガだけでなく、いわゆる職業病も労災保険の対象です。

 長時間労働、パワハラ、セクハラなど仕事上の強いストレスが原因で、うつ病や適応障害などの心の病になった場合は、労災と認められる場合があります。

ウサラ

わたし、派遣社員なんですが、労災申請できるんですか?

にゃソラ

もちろんです。
ところで、職場で、適応障害の原因になるような出来事はありましたか?

ウサラ

職場の上司にずっと怒鳴られて。「派遣なんだから、黙ってやれ」とか、「そんなこともできないのか」って…

にゃソラ

パワハラですね。
誰かに相談しましたか?

ウサラ

派遣会社には相談したんですが、結局、何も変わらなくて…
わたしの場合、労災は認められるんでしょうか?

にゃソラ

適応障害が、全て、労災になるわけではありませんが、厚労省の認定基準を満たした場合は、労災になります。
一般的にイメージするパワハラでは、労災と認められないんです。パワハラ+長時間労働といった合わせ技で、労災請求することが多いです。
ウサラさんの場合は、会社に相談後もパワハラが続いていたので、労災と認められるかもしれません。

仕事による強いストレスがあると認められば労災

 うつ病などの心の病の労災は、厚労省が定めた認定基準があります。以下の3つの要件を満たせば、労災と認定されます。

心の病の労災認定要件

①うつ病や適応障害など対象となる心の病を発病している

②発病前6か月間の間に、仕事による強い心理的負荷(ストレス)が認められる

③仕事以外の心理的負荷・個体側要因により発病したと認められない

 上記の3つの要件の内、最も重要な要件は、②の「仕事による強いストレスが認められる」です。

 ②仕事による強いストレスがあったかどうかは、認定基準の「業務による心理的負荷評価表」に基づいて判断します。

 心の病を発症した6か月前の仕事による強いストレスを感じた具体的な出来事を「業務による心理的負荷評価表」に当てはめます。当てはめた結果、心理的負荷の強度が「強」と判断されれば、労災と認定されます。

 したがって、仕事によるストレスで心の病を発症したと思っていても、全てが労災になるわけではありません。

 たとえば、ストレスの原因がパワハラの場合、一般的にイメージするパワハラでは、心理的負荷負荷の強度が「強」と判断されません。通常は、パワハラだけではなく、長時間労働や他に仕事による強いストレスを感じた具体的な出来事と併せて、労災請求をすることが多いです。

 精神障害の労災請求では、単に「つらかった」と説明するだけではなく、どの出来事が認定基準上のどの類型に当たるのかを整理することが重要です。

 精神障害の労災認定基準は、2023年9月1日に改正されています。認定基準の改正により、カスタマーハラスメントや、感染症等の病気の危険性が高い業務に従事したことたことが、心理的負荷評価表に追加されました。

精神障害の労災認定基準の改正-2023年9月1日~-

2023年9月1日に改訂された精神障害の労災認定基準を解説します。

 長時間労働、パワハラ、セクハラ、カスハラで労災になるケースを精神障害の労災認定基準に即して、紹介します。

長時間労働による精神障害

 長時間労働は、それ自体が具体的な出来事になるケースと他の具体的出来事の心理的負荷の強度を強めるケースがあります。

長時間労働による精神障害が労災となる場合

 長時間労働自体が具体的な出来事となり、労災と認められるのは、以下のようなケースです。

長時間労働による精神障害が労災となるケース

①発症直前の1か月間に、おおむね160時間を超えるような時間外労働を行った

②発症直前の3週間に、おおむね120時間以上の時間外労働を行った

 時間外労働時間数が倍以上に増加し、1か月当たりおおむね100時間以上となるような状況になり、業務に多大な労力を費やしたようなケースも労災となります。

にゃソラ

詳しくは、以下の各記事を参照

精神障害の労災認定基準における「特別な出来事」

精神障害の労災認定基準の「特別な出来事」について解説します。

精神障害の労災認定における心理的負荷の評価③仕事の量・質

精神障害の労災認定基準の心理的負荷表の具体的出来事の内、「仕事の量・質」を解説します。

長時間労働が他の具体的出来事の心理的負荷を強めるケース

 具体的出来事の前後で恒常的な長時間労働があった場合、その出来事の心理的負荷の強度を強める要素となる場合があります。

 具体的な出来事の前後で、時間外労働時間数が100時間程度となる月(30日)が1回でも存在すれば、その期間については、恒常的な長時間労働があったと認められます。

にゃソラ

詳しくは、以下の「精神障害の労災認定における恒常的長時間労働」を参照

精神障害の労災認定における恒常的長時間労働

精神障害の労災認定において心理的負荷の強度を強める要素となる恒常的長時間労働を解説します。

パワハラによる精神障害

 パワハラによる精神障害が労災となるのは、以下のようなケースです。

パワハラによる精神障害が労災となるケース

①上司から毎日のように人格を否定するような暴言を繰り返し受け、それが数か月間続いた結果、うつ病を発病し、医療機関で治療が必要になった場合

②業務に必要な情報を一切与えられず、職場内で意図的に孤立させられ、業務から排除された結果、精神的に追い詰められてうつ病を発症した場合

③達成不可能な業務目標を強制され、達成できないと厳しく叱責されることが繰り返された結果、うつ病を発症した場合

にゃソラ

詳しくは、以下の各記事参照

パワハラによる精神障害の労災認定基準

精神障害の労災認定基準の心理的負荷評価表にパワハラが、具体的出来事として明記されました。精神障害の労災認定基準におけるパワハラの心理的負荷の評価を解説します。

パワハラによるうつ病は労災になる?

パワハラが原因でうつ病を発症した場合、労災と見とれられるかを解説します。

セクハラによる精神障害

 セクハラによる精神障害が労災となるのは、以下のようなケースです。

セクハラによる精神障害が労災となるケース

①胸や腰等への身体的接触を含むセクハラで、継続して行われた場合

②胸や腰等への身体的接触を含むセクハラで、行為は継続していないが、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった又は会社への相談等の後に人間関係が悪化した場合

③身体的接触のない性的な発言のみのセクハラで、発言中に人格を否定するようなものを含み、かつ継続してなされた場合

④身体的接触のない性的な発言のみのセクハラで、性的な発言が継続してなされ、かつ会社がセクハラがあると把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった場合

にゃソラ

詳しくは、以下の記事参照

精神障害の労災認定における心理負荷の評価⑥セクシャルハラスメント

精神障害の労災認定基準の心理的負荷表の具体的出来事の内、「セクシャルハラスメント」を解説します。

カスハラによる精神障害

 カスハラによる精神障害が労災となるのは、以下のようなケースです。

カスハラによる精神障害が労災となるケース

①顧客等から、治療を要する程度の暴行等を受けた

②顧客等から、暴行等を反復・継続するなどして執拗に受けた

③顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を反復・継続するなどして執拗に受けた

④顧客等から、威圧的な言動などその態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を反復・継続するなどして執拗に受けた

⑤心理的負荷としては「中」程度の迷惑行為を受けた場合であって、会社に相談しても又は会社が迷惑行為を把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった

にゃソラ

詳しくは、以下の記事参照

精神障害の労災認定における心理的負荷の評価-カスタマーハラスメント-

精神障害の労災認定基準の心理的負荷表の具体的出来事の内、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」を解説します。

ウサラ

労災の請求って難しそう…証拠とかも必要なんですか?

にゃソラ

労災事故と比べると、心の病の労災請求は、大変です。
ボイスレコーダーや同僚の証言といった証拠があるかどうかは重要です。ただ、証拠がないからといって、労災請求を諦めるのは、もったいないです。

証拠がなくても労災請求してみる

 心の病で労災と認められるには、仕事による強いストレスによって、心の病を発症したことを労働者自身が証明しなければなりません。

原因証拠の例
長時間労働タイムカード、PCログ、メール送信履歴、シフト表
パワハラ・セクハラ録音、LINE・メール、日記、相談記録、同僚の証言
業務量の増加業務指示メール、担当件数、残業時間、引継ぎ資料

 長時間労働が原因であれば、労働時間がわかるタイムカードや会社のPCのログイン履歴などの客観的な証拠が必要です。

 パワハラの場合は、録音や目撃した同僚の証言があるといいです。日記などの労働者自身の記録が証拠として認められる場合もあります。

 セクハラの場合は、客観的な証拠がなくても、労働者の証言のみでセクハラの事実があったとして、労災かどうかの評価が行われる可能性があります。

 したがって、証拠がなくても、労災請求自体を諦める必要はないでしょう。

ウサラ

労災の請求って、わたし一人でできますか?

にゃソラ

労基署に相談すれば、請求自体は一人でできます。
ただ、心の病の労災は、労基署でも判断が難しい事案です。弁護士を頼っていただく方がいいと思います。

にゃソラ

あと、労災請求して大丈夫か?を必ず主治医に相談してください。

ウサラ

どうしてですか?

にゃソラ

心の病で労災と認定されるには、認定基準に即して、仕事で強いストレスを感じたことを具体的に主張する必要があります。
ウサラさんの場合、「上司から日々、人格を否定されることを言われてました。」という主張ではダメなんです。
いつ、どこで、どのような状況で、誰かから、どのような言動があったかを具体的に主張する必要があります。

にゃソラ

つまり、労災の請求をすると、必然的に、上司から言われたパワハラの言動を全て思い出していただくことになります。その結果、病状が悪化してしまうことがあるんです。
労災の請求をしても大丈夫な病状かを主治医に相談してくださいね。

ウサラ

そういうことなんですね。今度の診察のときに、先生に相談してみます。

労災請求することを主治医に相談

 心の病で労災の請求をする場合、主治医の先生に相談することをお勧めします。

 診断書を書いてもらう、意見書を書いてもらう、労基署からの照会に対応してもらうことをお願いするというのが、一つの理由です。

 もう一つの理由は、労災請求することで、病状が悪化する可能性があるからです。心の病の労災は、仕事による強いストレスによって発症したと証明できれば、労災と認定されます。そのためには、仕事による強いストレスを感じた具体的な出来事を主張・証明する必要があります。パワハラの場合は、いつ、どこで、誰から、どのような状況で、どんなことを言われたのかを具体的に主張する必要があります。そのことを思い出して、病状が悪化するおそれがあるのです。

 そのため、法律事務所エソラでは、心の病で労災請求する場合は、必ず主治医の許可を得るようにお願いしています。

 次のような場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

  • 会社が労災申請に協力してくれない
  • パワハラやセクハラの証拠が少ない
  • 長時間労働とハラスメントが重なっている
  • 労災申請のために出来事を整理するのがつらい
  • 労災だけでなく、会社への損害賠償請求も検討したい

うつ病は労災になりますか?

ウサラ

うつ病も労災になるの?

にゃソラ

仕事による強いストレスが原因で、うつ病になった場合は労災になるよ。

 長時間労働、パワハラ、セクハラなど、仕事による強い心理的負荷が原因で発病したと認められる場合は、労災になる可能性があります。

適応障害も労災の対象ですか?

ウサラ

適応障害も労災の対象?

にゃソラ

仕事による強いストレスが原因で、適応障害になった場合は労災になるよ。

 適応障害も長時間労働、パワハラ、セクハラなど、仕事による強い心理的負荷が原因で発病したと認められる場合は、労災になる可能性があります。

パワハラの証拠がないと労災は無理ですか?

ウサラ

パワハラの証拠がないと、労災にならない?

にゃソラ

証拠がない場合に、一切、労災と認めれないというわけではないよ。

 うつ病・適応障害などの原因となった仕事による強いストレスがあったことは、労働者が証明する必要があります。証明のためには、証拠が必要です。したがって、録音などの明確な証拠があるに越したことはありません。
 明確な証拠がなくても、日記、相談記録、受診記録、メール、同僚の証言などからパワハラがあったことを証明できる場合があります。

会社が労災申請に協力してくれない場合はどうすればいいですか?

ウサラ

会社が労災申請に協力してくれない場合は、どうしたらいいの?

にゃソラ

会社が労災申請に協力的でない場合は、労働者自身が労基署に請求できるよ。

 会社の協力が得られない場合でも、労働者本人が労基署に労災請求をすることは可能です。ただし、精神障害の労災では具体的な出来事の整理が重要です。弁護士に相談することも検討してください。

労災が認められたら会社に損害賠償請求できますか?

ウサラ

労災と認められたら、会社に損害賠償請求できる?

にゃソラ

会社に安全配慮義務違反があれば、損害賠償請求できるよ。

 労災保険の請求と会社への損害賠償請求は別の問題です。会社に安全配慮義務違反などがある場合は、慰謝料や逸失利益などを損害賠償として請求できる可能性があります。

会社に損害賠償ってできる?‐労災で傷ついた家族の最後のハードル‐

労災の最後のハードルである会社への損害賠償請求について解説します。

 うつ病、適応障害などの心の病の労災は、労基署でも判断が難しい事案です。労災と認定されるには、認定基準に即して、具体的な出来事を主張・証明する必要があります。そのためには、労災の認定基準を理解していることが必要です。

 弁護士は、労災の認定基準の専門知識を持っています。労災保険の請求から訴訟まで全ての手続きに対応できます。

 精神障害の労災請求では、これまでの出来事を思い出すこと自体が大きな負担になることがあります。
法律事務所エソラでは、無理に話を急がせることはありません。まずは、診断名、勤務状況、つらかった出来事を、話せる範囲でお聞きします。

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