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転倒事故は労災になる?-仕事中・通勤中の転倒と会社への損害賠償請求-


 職場で床が濡れていて滑った、荷物を運んでいる途中につまずいた、通勤中に転んで骨折した―

 転倒事故は、労災事故の中でも非常に多い事故類型です。

 一見すると「自分の不注意」と思われがちですが、仕事中や通勤中の転倒でケガをした場合、労災保険の給付を受けられる可能性があります。

 また、床の水濡れや段差の放置、安全靴・作業環境の不備など、会社側の安全配慮義務違反が問題になるケースでは、労災保険とは別に、会社へ損害賠償請求を検討できることもあります。

 このページでは、転倒事故が労災になるケース、会社に損害賠償請求できるケース、弁護士に相談した方がよい場面について解説します。

ウサラ

職場で転んで骨折したんだけど、会社から「自分の不注意でしょ」って言われたんだ…

にゃソラ

転倒事故は、たしかに本人の不注意と言われやすい事故だね。でも、仕事中や通勤中の事故なら、労災保険の対象になる可能性があるよ。

ウサラ

えっ、自分が転んだ場合でも労災になるの?

にゃソラ

なることはあるよ。しかも、床が濡れたままだった、段差が放置されていた、足元が見えない状態で作業させられていた、という事情があれば、会社への損害賠償請求を検討できることもある。

ウサラ

転んだだけって思ってたけど、ちゃんと事情を整理した方がいいんだね。

にゃソラ

そう。転倒事故は「本人の不注意」で片づけられがちだけど、労災保険と会社の責任は分けて考える必要があるんだ。

 労災の事故類型の内、最も発生件数が多いのが転倒事故です。厚労省が発表した「令和6年度の労働災害の発生状況の分析等の概要」によると、死傷者数は36,378人で1位となっています。

 業務中、通勤中を問わず、ちょっとした足元の油断が大きなケガにつながります。

 以下の3つが、転倒事故の典型です。

転倒事故に多い3つの類型

①滑り

②つまずき

③踏み外し

 ②つまずきによる転倒事故は、「何もないところで、つまずいて転倒する事故」が最も多くなっています。最近は、50歳以上の労働者を中心に転倒による骨折の労災事故が増加しています。

濡れた床・油・雪で滑った

滑りによる転倒事故の例

飲食店、スーパーマーケットなどの床をモップ掛け中に滑って転倒

工場の床や作業通路に油が漏れて滑って転倒

通勤途中に、雨や雪で滑って転倒

段差・コード・荷物につまずいたケース

つまずきによる転倒事故の例

荷物を持ちながらつまずき転倒

倉庫やバックヤードで、通路に置かれた台車、資材、商品などにつまずいて転倒

事務所の床の配線カバーなどのちょっとした段差につまづき転倒

階段・トラック荷台・作業場所で踏み外したケース

踏み外しによる転倒事故の例

暗いところで、足元が見えず階段を踏み外して転倒

両手で大きな荷物を抱えて階段を降りる際、足元が見えずに階段を踏み外しして転倒

脚立やトラックの荷台から降りる際、最後の一段を踏み外して転倒

転倒事故はなぜ起きる?

 転倒事故の典型の①滑り、②つまずき、③踏み外しについて、主な原因は、以下のとおりです。

転倒事故の主な原因

滑り:油、水、霜などで床面が滑りやすくなる

つまずき:施設物の段差、コード類に足を取られる

踏み外し:大きな荷物を抱える等足元の見えない状態で作業をしている

  仕事中に転倒してケガをした場合は、業務災害として、労災保険の給付を受けられる可能性があります。

就業中に転倒した場合

 就業中に職場で転倒した場合、労災となります。速やかに、上司や人事・労務担当者などに、転倒事故があった旨を報告しましょう。

職場内を移動中に転倒した場合

 就業中に、職場を移動しているときに転倒した場合、労災となります。

始業前・終業後に職場内で転倒した場合

 問題は、①出勤後、始業時間までの間と②終業後、退勤するまでの間に職場内で転倒した場合です。この場合、所定労働時間外ですが、会社が管理する施設内にいる限り、会社の支配下にあると解されています。したがって、転倒事故が、会社の施設の管理状況に起因していないことの証明がない限り、労災になります。

休憩時間中に職場内で転倒した場合

  休憩時間中に、職場内にいる場合は、会社の支配下にあると解されています。しかし、休憩時間中は、労働者は自由に行動することができます。したがって、休憩時間中の転倒事故が、会社の施設の管理状況に起因していることを証明しなければ、労災にならないと解されます。

 ただ、休憩時間中の労働者の行動の中には、就業時間中であれば、業務行為となるような作業と関連する必要行為・合理的行為が存在します。これらの行為については、就業時間中か休憩時間中かで区別するのは、相当ではないと考えられます。したがって、転倒事故が、会社の施設の管理状況に起因していないことの証明がない限り、労災になります。

出張中・外回り中に転倒した場合

 出張のために移動中に転倒した場合は、通勤災害ではなく、業務災害として労災と認定されます。

「自分の不注意」と言われた場合

 会社に対する損害賠償請求と労災保険の請求は異なります。たとえ、自分の不注意で転倒した場合であっても、就業時間中の転倒であれば労災になります。

 ②通勤途中に転倒してケガをした場合は、通勤災害として労災保険の給付を受けられる可能性があります。

転倒による通勤災害の例

駅の階段で転倒した

通勤中に、雨・雪で滑って転倒した

自転車通勤中に転倒した

にゃソラ

通勤災害の詳細は、以下の「通勤災害と労災」を参照

通勤災害と労災

通勤途中の事故は、通勤災害として労災の対象になります。通勤災害の概略を解説します。

通常の通勤経路から外れていた場合は通勤災害とならない

 通勤途中の災害が通勤災害と認められるには、通勤が「合理的な経路及び方法」であることが必要です。以下のような合理的な経路の逸脱・中断がある場合は、通勤災害とは認められません。

逸脱・中断の例

通勤途中に知人・友人の家に立ち寄る

終業後に同僚や友人と飲みに行く

通勤途中に映画館やパチンコ店に立ち寄る

にゃソラ

以下の「通勤途中の事故は労災?‐寄り道したら?交通事故の場合は?‐」も参照

 転倒事故で多いのが以下のようなケガです。

転倒事故で多いケガ

①橈骨遠位端骨折

②大腿骨頸部骨折

③肩関節・膝関節のケガ

④腰痛・頚部のケガ

⑤頭部外傷

骨折・関節の損傷

 転倒事故による骨折・関節の損傷によって、関節の可動域制限が残ることがあります。転倒時に手をついて手首を骨折した、肩や膝の靱帯を損傷した場合に、問題になります。

 関節の可動域制限が後遺障害として認めれるには、①一定程度の関節の可動域制限と②関節の可動域が制限される原因となる器質的損傷があることが必要です。

せき柱の変形や運動障害

 転倒して背中や腰を強打したことによる圧迫骨折の結果、せき柱の変形や運動障害が残ることがあります。

頭部外傷による高次脳機能障害

 転倒時に頭部を強打した場合、高次脳機能障害が残る可能性があります。

 高次脳機能障害は、頭部外傷により意識障害を負った後、意識回復後に認知障害・人格変性・行動障害を生じたことで社会復帰が困難となる後遺障害です。

にゃソラ

高次脳機能障害の後遺障害の認定には、以下の3つの要素が必要とされています。

高次脳機能障害の認定要素

①墜落・転落事故による脳損傷を裏付ける画像所見

②一定期間の意識障害の継続

③一定の異常な傾向が生じている

 被害者に高次脳機能障害の症状が現れているのか?やその症状の程度は、家族や職場・学校等の周囲の人でなければ、気づかないことがあります。高次脳機能障害の後遺障害の認定には、家族の協力が不可欠となります。

 労災保険は、事故の原因にかかわらず、国から最低限の補償を受けられる制度です。転倒事故の発生について、会社に安全配慮義務違反があった場合は、会社に対して、損害賠償請求できます。

労災保険会社への損害賠償
目的迅速かつ公正な保護のため必要な補償を行う被った損害の賠償
条件業務中のケガ又は通勤途中のケガ会社に過失(安全配慮義務違反)がある場合
休業損害平均賃金の60%
(特別支給金を含めて80%)
100%
(労災保険の休業補償給付は控除)
慰謝料支給されない請求可能

 上記の表のように、労災保険では補えない部分があります。つまり、労災保険で十分とは限らないのです。労災保険で補償されない部分については、会社に対する損害賠償請求を検討することになります。

 転倒事故の発生について、会社に安全配慮義務違反があれば、会社に損害賠償請求できます。

 労災保険の給付のみでは、補償として、不十分です。会社へ損害賠償請求できるか?を検討しましょう。

 たとえば、何もないところで、つまずいて転倒した場合は、会社の安全配慮義務違反が認められない可能性が高いでしょう。

 しかし、一見すると、労働者本人の不注意でも、会社にまったく責任がないかと言えば、そうとも限りません。

 以下のような場合は、会社の安全配慮義務違反が認められる可能性が高いです。

転倒事故で安全配慮義務違反が認められる例

①床の水・油・凍結を放置していた

②段差やコードなど危険箇所を放置していた

③照明が暗く、足元が見えにくかった

④滑りやすい靴・不適切な作業靴で作業させていた

⑤重い荷物を持たせ、足元が見えない状態で作業させていた

⑥転倒防止の安全教育がなかった

労災で会社に対して損害賠償請求したい方

労災と認定されて労災保険の給付を受けても、慰謝料や将来の収入減少まですべて補償されるわけではありません。会社に安全配慮義務違反がある場合、会社や元請会社に損害賠償請求できる可能性があります。

 次のような場合は、労災保険の手続きだけでなく、会社への損害賠償請求を検討すべき可能性があります。

  • 会社が労災申請に協力しない
  • 「本人の不注意」と言われている
  • 骨折などで治療が長引いている
  • 後遺障害が残りそう
  • 会社に損害賠償請求できるか知りたい
  • 会社との交渉が不安

 転倒事故の労災認定自体が問題になることは少ないです。また、転倒事故でも、会社に損害賠償請求できる場合があります。

 しかし、転倒事故の場合、被災労働者本人の不注意などのミスがある場合は、会社と責任の所在や割合で意見が食い違い、大きな争いになることがあります。

 会社との交渉やその後の訴訟などの手続きを被災労働者本人が、一人で手続き進めていくのは、困難でしょう。

 弁護士は、労災の損害賠償の専門知識を持っています。労災保険の請求のみならず、会社への損害賠償請求についても会社との交渉から訴訟まで、労災の全ての手続きに対応できます。

 転倒事故の被害にあった労働者の方は、ぜひ、一度、ご相談ください。

労災の不安、ひとりで抱え込まなくて大丈夫です

仕事中のケガ、後遺障害、会社への損害賠償請求など、状況を整理するところから弁護士が伺います。

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