足場から落ちた、脚立から転落した、屋根やトラックの荷台から落下した――
墜落・転落事故は、労災事故の中でも重症化しやすく、骨折、脊髄損傷、頭部外傷、高次脳機能障害など、仕事や生活に大きな影響が残ることがあります。
労災保険で治療費や休業補償を受けられるとしても、それだけで十分とは限りません。後遺障害が残った場合や、会社の安全対策に問題があった場合には、会社や元請事業者に対する損害賠償請求を検討すべきケースがあります。

高いところから落ちた事故って、労災になればそれで終わりなの?

労災保険は大事だけど、それだけで全部の損害が補償されるとは限らないんだ。

えっ、会社に責任を問える場合もあるってこと?

うん。足場や作業床の不備、安全帯の未使用、安全教育不足などがあると、会社への損害賠償請求を検討できることがあるよ。
- 1. 墜落・転落事故とは?
- 1.1. 墜落・転落事故はなぜ起きる?
- 2. 墜落・転落事故で多いケース
- 3. 墜落・転落事故で多いケガ・後遺障害
- 3.1. 脊髄損傷
- 3.2. 頭部外傷による高次脳機能障害
- 3.3. 骨折・関節の損傷
- 3.4. 腹部・内臓損傷
- 4. 墜落・転落事故は労災認定される?
- 5. 労災保険だけでは補償が不十分なことがある
- 6. 墜落・転落事故で、会社に損害賠償できる?
- 7. 元請事業者に損害賠償請求できる場合がある
- 8. 墜落・転落事故で弁護士に相談すべきタイミング
- 8.1. 墜落・転落事故発生直後
- 8.2. 労災申請の前後
- 8.3. 治療中・症状固定前後
- 8.4. 示談案提示の段階
- 9. 墜落・転落事故の被害に遭ったら弁護士に相談を
墜落・転落事故とは?
建設現場などで高所作業中に足場から落下する事故が、墜落・転落事故の典型です。
厚労省が発表した「令和5年度の労働災害の発生状況の分析等の概要」によると、死亡者数は204人で1位、死傷者数は20,758人で3位の事故類型です。
墜落・転落事故は、単に「落ちた事故」というだけではありません。死亡事故や重い後遺障害につながりやすく、労災保険の給付だけでは生活再建に十分でないことがあります。特に、脊髄損傷、頭部外傷、骨折後の可動域制限などが残る場合は、後遺障害の認定と会社への損害賠償請求をあわせて検討することが重要です。

墜落・転落事故はなぜ起きる?
墜落・転落事故の原因は、事故によって様々です。以下のような原因が考えられます。
墜落・転落事故で多いケース
よくある墜落・転落事故には、以下のような事故があります。
墜落・転落事故で多いケガ・後遺障害
墜落・転落事故で多いのが、以下のようなケガです。
脊髄損傷
墜落・転落事故による脊椎の骨折や脱臼に伴い脊髄を損傷してしまうことがあります。脊髄が損傷すると、損傷された脊髄神経の髄節支配領域下にある両上肢又は下肢に麻痺が残ります。
労災保険の後遺障害としては、身体的所見とMRIやCTによって裏付けることのできる麻痺の範囲と程度によって認定されます。
頭部外傷による高次脳機能障害
頭部外傷で想定される後遺障害として、高次脳機能障害があります。
高次脳機能障害は、頭部外傷により意識障害を負った後、意識回復後に認知障害・人格変性・行動障害を生じたことで社会復帰が困難となる後遺障害です。

高次脳機能障害の後遺障害の認定には、以下の3つの要素が必要とされています。
被害者に高次脳機能障害の症状が現れているのか?やその症状の程度は、家族や職場・学校等の周囲の人でなければ、気づかないことがあります。高次脳機能障害の後遺障害の認定には、家族の協力が不可欠となります。
骨折・関節の損傷
墜落・転落事故による骨折・関節の損傷によって、関節の可動域制限が残ることがあります。
関節の可動域制限が後遺障害として認めれるには、①一定程度の関節の可動域制限と②関節の可動域が制限される原因となる器質的損傷があることが必要です。
腹部・内臓損傷
墜落・転落事故によって、肝臓・腎臓などの臓器を損傷することがあります。胸腹部の臓器の損傷は、損傷の程度によって後遺障害として認定されることがあります。
墜落・転落事故は労災認定される?
墜落・転落事故は、明らかに業務中に発生する事故です。したがって、会社が労災隠しをしなければ、墜落・転落事故の労災認定が問題になることはないでしょう。
会社が労災隠しをしている場合は、作業中の墜落・転落事故を目撃した同僚等の証言を確保しておく必要があります。
労災保険だけでは補償が不十分なことがある
労災保険は、事故の原因にかかわらず、国から最低限の補償を受けられる制度です。墜落・転落事故の発生について、会社に安全配慮義務違反があった場合は、会社に対して、損害賠償請求できます。
| 労災保険 | 会社への損害賠償 | |
| 目的 | 迅速かつ公正な保護のため必要な補償を行う | 被った損害の賠償 |
| 条件 | 業務中のケガ又は通勤途中のケガ | 会社に過失(安全配慮義務違反)がある場合 |
| 休業損害 | 平均賃金の60% (特別支給金を含めて80%) | 100% (労災保険の休業補償給付は控除) |
| 慰謝料 | 支給されない | 請求可能 |
上記の表のように、労災保険では補えない部分があります。つまり、労災保険で十分とは限らないのです。労災保険で補償されない部分については、会社に対する損害賠償請求を検討することになります。
墜落・転落事故で、会社に損害賠償できる?
墜落・転落事故の発生について、会社の安全配慮義務違反があれば、損害賠償請求が認められます。
労災保険の給付のみでは、補償として、不十分です。会社へ損害賠償請求できるか?を検討しましょう。
以下のような場合は、会社の安全配慮義務違反が認められる可能性が高いです。

以下の「会社に対して損害賠償請求したい方」も参照
会社に対して損害賠償請求したい方
労災事故の被害に遭ったけど会社に損害賠償請求できる?損害賠償の相場は?労災事故で会社に対する損害賠償のよくある疑問を解説します。 労災事故で会社に損害賠償請求できる? 仕事中にケガをして、労災保険から給付を受けたけど、 […]
元請事業者に損害賠償請求できる場合がある
建設請負工事は、工事を請負う会社は1社ではなく、元請事業者が下請を利用し、下請がさらに二次下請を利用するなど、複数の事業者が重層的に参加して工事が行われます。
下請事業者の労働者が、作業中に墜落・転落事故に遭った場合、元請事業者が当然に、損害賠償義務を負うわけではありません。
下請事業者の労働者が、元請事業者から指揮・監督を受けている場合や元請事業者が管理する設備・工具等を使っていた場合など、特別の社会的接触関係が認められる場合は、元請事業者の下請事業者の労働者に対する安全配慮義務が認められます。

以下の「建設業の労災-会社に損害賠償請求できる?-」も参照
墜落・転落事故で弁護士に相談すべきタイミング
墜落・転落事故の発生直後から労災申請前、治療中、症状固定、示談案提示まで様々なタイミングがあります。弁護士に相談するのは、早ければ早いほどいいでしょう。
墜落・転落事故発生直後
墜落・転落事故の発生直後は、今後どうなってしまうのか?これから何をしたらいいのか?が分からず、混乱している方が多いと思います。
墜落・転落事故の発生後すぐに、弁護士に相談することで、今後の手続きの流れや何をすればいいのかを確認・整理することができます。
労災申請の前後
会社が労災と認めない、労災の申請に協力的ではないうケースがあります。弁護士に相談することで、今後の見通しや労災申請の手続きをスムーズに進めることができます。
治療中・症状固定前後
治療中・症状固定の前後は、労災保険の後遺障害の認定に備える時期です。弁護士に相談することで、後遺障害の認定の見通しが分かります。また、後遺障害の認定に必要な検査・診断書の作成を主治医に依頼することのサポートを受けられます。
示談案提示の段階
会社や会社が加入している保険会社から示談案の提示があった段階です。弁護士に相談することで、示談案が妥当かを確認できます。
そもそも、会社から示談案の提示がないケースも多いです。弁護士に相談することで、会社に対して損害賠償請求が可能かどうかを確認することができます。
墜落・転落事故の被害に遭ったら弁護士に相談を
次のような場合は、労災保険の手続きだけでなく、会社への損害賠償請求を検討すべき可能性があります。
- 骨折、脊髄損傷、頭部外傷など重いケガをした
- 後遺障害が残りそう、又は症状固定が近い
- 足場・脚立・はしご・安全帯などの安全対策に問題があった
- 会社や元請から十分な説明がない
- 労災保険だけで今後の生活が不安
墜落・転落事故は、早い段階で証拠を確認することが大切です。
労災保険の手続きや会社への損害賠償請求について不安がある方は、一度、弁護士にご相談ください。
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