
利用者さんを支えた瞬間、腰に激痛が走ったんだけど、転んだわけじゃないし、これも労災になるの?

転倒していなくても、急な反動や無理な姿勢によって腰を痛めた場合は、「動作の反動・無理な動作」による労災になる可能性があるよ。

仕事中に腰が痛くなったっていうだけじゃダメなの?

重要なのは、「何を持っていたか」、「どんな姿勢だったか」、「予想外の動きがあったか」、「痛みがいつ出たか」なんだ。事故直後から状況を記録しておくことも重要だよ
重い荷物を持ち上げた瞬間に腰を痛めた、介護中に利用者の体を支えて腰をひねった、動かない台車を無理に押して背中を痛めた―
このような事故は、「動作の反動・無理な動作」による労災に該当する可能性があります。
ただし、仕事中に腰が痛くなったからといって、すべて労災になるわけではありません。労災認定では、発症時の動作や姿勢、取り扱った物の重さ、予想外の出来事、痛みが生じた時期などが重要になります。
このページでは、動作の反動・無理な動作による事故の具体例、腰痛・ぎっくり腰の労災認定、事故直後に残しておきたい証拠、会社への損害賠償請求について解説します。
- 1. 動作の反動・無理な動作の事故とは?
- 1.1. 動作の反動・無理な動作の事故はなぜ起きる?
- 1.2. 腰痛だけではない
- 2. よくある動作の反動・無理な動作の事故
- 2.1. 製造業
- 2.2. 陸上貨物運送業
- 2.3. 医療・介護業
- 2.4. 小売業
- 3. 動作の反動・無理な動作は労災になる?
- 3.1. 仕事による腰痛は「急性型」と「慢性型」に分けられる
- 3.2. 急性型の腰痛
- 3.3. 慢性的な腰痛
- 4. 仕事中のぎっくり腰が労災になるケース・ならないケース
- 5. 事故直後に記録しておきたいこと
- 6. 動作の反動・無理な動作の事故で会社に損害賠償請求できる?
- 7. 動作の反動・無理な動作の事故の被害に遭った方へ
動作の反動・無理な動作の事故とは?
「動作の反動・無理な動作の事故」は、重い荷物を持ち上げたり、不自然な姿勢で作業した際の「反動」や「無理な動作」で生じる事故類型です。
厚労省が発表した「令和7年度の労働災害の発生状況の分析等の概要」によると、死傷者数は22,166人で事故類型別の発生件数で2位となっています。
製造業、陸上貨物運送業、小売業、社会福祉施設で発生する労働災害の中で、上位を占めています。
特に、介護施設等の社会福祉施設では、全体の34.7%を占め、最も多い事故類型となっています。

動作の反動・無理な動作の事故はなぜ起きる?
動作の反動・無理な動作の事故の主な原因は、以下のとおりです。
腰痛だけではない
動作の反動・無理な動作の事故の典型は、不自然な姿勢で重い荷物を持ったりしたことによる腰痛です。腰だけではなく、首、肩、肘、手首の関節症、筋挫傷や捻挫が問題になることがあります。
このページでは、基本的に、動作の反動・無理な動作の事故の典型の腰痛について取上げます。
よくある動作の反動・無理な動作の事故
よくある動作の反動・無理な動作の事故には、以下のような事故があります。
製造業
製造業の動作の反動・無理な動作の事故の例
工場などで原材料を持ち上げようとした際に腰を痛める
重量物を積んだ台車が動かず、無理に引っ張ったり押したりして体を捻った

以下の「作業中に腰を痛めた…動作の反動・無理な動作も労災になる?」も参照
陸上貨物運送業
陸上貨物運送業の動作の反動・無理な動作の事故の例
トラックの荷台で重量物を抱え上げた際に腰を痛めた
荷台の奥にある荷物を、腕を伸ばしたまま無理な体勢で手前に引き寄せようとして、筋肉・関節を痛めた

以下の「陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作」も参照
医療・介護業
医療・介護業の動作の反動・無理な動作の事故の例
ベッドから車椅子へ移乗させようと利用者を抱え上げた際に腰を痛める

以下の「介護職の腰痛は労災?動作の反動・無理な動作」も参照
小売業
小売業の動作の反動・無理な動作の事故の例
商品を棚の最上段に無理に手を伸ばして並べようとして肩を痛める
中腰で棚卸作業中にバランスを崩し関節を捻った
狭い通路で重い段ボールを持ったまま、体だけを急激にひねって腰を痛めた
レジ打で、重い商品をカゴからカゴへ移す動作を、体をひねったまま何度も繰り返して手首を痛めた

以下の「小売業における動作の反動・無理な動作」も参照
動作の反動・無理な動作は労災になる?
動作の反動・無理な動作による腰痛=業務上腰痛を例にします。業務上腰痛には、①災害性腰痛と②非災害性腰痛の2種類があります。
仕事による腰痛は「急性型」と「慢性型」に分けられる
| 急性型の腰痛 | 慢性型の腰痛 | |
| 労災の分類 | 災害性腰痛 | 非災害性腰痛 |
| 発症の原因 | 突発的な出来事によって、腰に急激な力が加わって発症 | 腰に負担のかかる作業を一定期間続けたことによって発症 |
| 典型例 | 重い荷物を持ち上げた瞬間に腰を痛めた 荷物が突然動き、とっさに支えた介護中に利用者の体重が急にかかった | 重量物の取扱いを長期間続けた 不自然な姿勢での作業を繰り返した 腰に強い負担のかかる作業に継続して従事した |
| 労災認定のポイント | 業務中に突発的な出来事があったか? 通常とは異なる動作だったか? 腰に急激な力が加わったか? | 作業内容や作業姿勢 重量物の重さや取扱頻度 業務に従事した期間 身体的な条件 |
| 確保したい証拠 | 荷物の重さ・大きさ 発症時の姿勢 予想外の動き・痛みが生じた瞬間目撃者 | 具体的な作業内容・作業姿勢 1日の作業時間 重量物の重さ 重量物を扱う回数・従事期間 |
急性型の腰痛
①災害性腰痛は、業務中の転落や転倒等が原因による急性型の腰痛です。典型は、ぎっくり腰です。
転倒など腰の負傷を原因とする場合、重量物の取扱い作業中に不自然な姿勢をとったことが原因の場合などが、災害性腰痛の典型です。
災害性腰痛の場合は、腰痛の原因が明らかなことが多いのが特徴です。労災認定に際しては、腰にどのように負担がかかったのか?を明らかにする必要があります。

災害性腰痛の詳細は、以下の記事参照
慢性的な腰痛
②非災害性腰痛は、重量物の取扱い業務などの腰部に過度の負担がかかる業務に、長期間従事することによって発症する慢性的な腰痛です。
一般的に、非災害の疾病の労災の認定は、その判断に困難が伴います。その理由は以下のとおりです。

非災害性腰痛の詳細は、以下の記事参照
仕事中のぎっくり腰が労災になるケース・ならないケース
災害性腰痛の典型は、ぎっくり腰です。しかし、仕事中にぎっくり腰になったというだけで、当然に労災と認定されるわけではありません。ぎっくり腰は、日常生活の動作によっても発症することがあるためです。そのため、労災認定では「仕事中だったか」だけでなく、腰にどのような力が加わったのかが重要になります。
たとえば、次のような事情がある場合は、業務によって腰に急激な負担が加わったとして、労災と認定される可能性があります。
- 重量物を持ち上げた瞬間に、腰に強い痛みが生じた
- 介護中に利用者の体重が突然かかった
- 台車や機械を無理に押したり引いたりした
- 狭い場所や足場の悪い場所で、不自然な姿勢になった

ただし、労災と認定されるのは、医師により療養が必要と判断された場合のみです。
一方、デスクワーク中に立ち上がったなど、以下のような日常的に行う動作によって発症した場合は、業務との因果関係が認められにくいことがあります。
- デスクワーク中に椅子から立ち上がろうとして、腰を痛めた
- 床に落ちたペンを取ろうと屈んだ際に、腰を痛めた
- 咳やくしゃみをしたときにm腰を痛めた
- 慢性的な腰痛が仕事を関係なく悪化した
したがって、事故直後から、取り扱った物の重さ、身体の姿勢、予想外の出来事、痛みが生じた瞬間などを具体的に記録しておくことが重要です。
事故直後に記録しておきたいこと
労災の認定をスムーズに進めるために、以下のような事実を記録・保存しておくといいでしょう。
- 事故日時と場所
- 作業内容
- 荷物の種類・重さ・大きさ
- 身体の姿勢
- 荷物や利用者の予想外の動き
- 痛みが生じた瞬間の状況
動作の反動・無理な動作の事故で会社に損害賠償請求できる?
動作の反動・無理な動作の事故の発生について、会社に安全配慮義務違反があれば、会社に損害賠償請求できます。
労災保険では慰謝料は支給されません。また、休業損害や後遺障害による逸失利益についても、現実に生じた損害との差額が残ることがあります。会社に安全配慮義務違反がある場合は、その差額や慰謝料を含めて損害賠償請求を検討します。

裁判例では、厚労省の通達やガイドラインの内容を参考に、会社の安全配慮義務を設定しています。以下のような義務に違反していると、損害賠償が認められる傾向にあります。

以下の「労災で会社に対して損害賠償請求したい方」も参照
労災で会社に対して損害賠償請求したい方
労災と認定されて労災保険の給付を受けても、慰謝料や将来の収入減少まですべて補償されるわけではありません。会社に安全配慮義務違反がある場合、会社や元請会社に損害賠償請求できる可能性があります。
動作の反動・無理な動作の事故の被害に遭った方へ
- 重い荷物を持ち上げたときに腰を痛めた。
- 介助中に利用者の身体を支えた瞬間、腰に激痛が走った。
- 無理な姿勢で作業を続けた結果、肩や背中を痛めた。
このような事故について、
- 「転倒したわけではないから、労災にはならない」
- 「ぎっくり腰は、もともとの体質や年齢のせいだと言われた」
- 「自分の持ち方が悪かっただけだから、会社には責任を問えない」
と思っていませんか。
しかし、転倒や機械への巻き込まれがなくても、仕事中の急な反動や無理な姿勢によって身体を痛めた場合は、「動作の反動・無理な動作」による労災と認められる可能性があります。
労災認定では、単に「仕事中に痛くなった」というだけでなく、
- どのような作業をしていたか?
- どの程度の重さの物を扱っていたか?
- どのような姿勢や動作だったか
- 予想外の出来事があったか?
- いつ、どのように痛みが生じたか
といった事故状況を具体的に整理することが重要です。
また、本来は複数人で行う作業を一人でさせていた、必要な補助器具が用意されていなかった、腰痛を訴えていたのに作業を変更しなかったなど、会社安全配慮義務違反があった場合は、労災保険とは別に、会社へ損害賠償請求できることもあります。
法律事務所エソラでは、事故の状況や医療記録、職場の作業環境などを確認し、労災申請や会社へ損害賠償請求ができるかを一緒に整理します。
動作の反動・無理な動作の事故の被害にあった労働者の方は、ぜひ、一度、ご相談ください。

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