過労死の労災認定において、心不全はどのよう取扱われるのでしょうか?
脳・心臓疾患の労災認定基準の対象疾患
業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡である過労死は、労災では、脳・心臓疾患の労災認定基準によって、労災かどうか?を判断しています。
脳・心臓疾患の労災認定基準では、対象となる疾病を脳血管疾患と虚血性心疾患のそれぞれについて挙げています。
対象疾患については、以下の記事参照
脳・心臓疾患(過労死)
基本的な考え 脳・心臓疾患は、発症の基礎となる動脈硬化などの血管病変等が加齢・食生活・生活環境などの日常生活による諸要因や遺伝等による要因により形成され、徐々に進行・憎悪し、ある日突然に発症します。 つまり、業務上の […]
労災認定基準では、まず、対象疾病を発病したかどうかを審査します。
急性心不全
死亡診断書の死因に急性心不全と記載されていることがあります。急性心不全とは、急に心臓が停止したという状態のことです。要するに、心臓が止まったと書かれていて、死亡しているという状態を言い換えているといえます。急性心臓死や心臓麻痺等も同様です。
心不全の原因は、心筋梗塞や狭心症などの脳・心臓疾患の対象疾病が原因のこともあれば、そうでないこともあります。このことは、脳卒中でも同じことがいえます。脳卒中は、脳血管発作により何らかの脳障害を起こした状態です。その原因は、くも膜下出血や脳梗塞などの脳・心臓疾患の対象疾病の場合もあれば、そうでない場合もあります。
それでは、死亡診断書に、心不全や脳卒中と記載がある場合、過労死として労災が認定されることはないのでしょうか?
労災認定基準の取扱い
労災認定基準では、心不全や脳卒中について、その原因となった疾病が対象疾病以外の疾病であると確認された場合を除き、認定基準によって判断して差し支えないとしています。
したがって、心不全や脳卒中の原因が対象疾病以外の疾病だと確認された例外的な場合を除いて、脳・心臓疾患の労災認定基準によって、労災かどうか?を判断されます。
不整脈による突然死も対象疾病として取扱われる
労災認定基準は、不整脈による突然死について、対象疾病である心停止(心臓性突然死を含む)に含めて取り扱うとしています。
脳・心臓疾患の労災認定の新基準
令和3年9月に改定された脳・心臓疾患の労災認定の新基準では、対象疾病に「重篤な心不全」が追加されました。