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労災の上積み補償と損害賠償


労災が発生した際、労災保険とは別に会社が労働者に金銭を給付することがあります。この労災の上積み補償を取上げます。

労災の上積み補償

 労働災害が発生した際に、会社によっては、労働協約や就業規則において、労災保険の給付とは別に、一定の補償を上乗せして給付を行う制度を導入していることがあります。これを労災の上積み補償と呼んでいます。

 労災の上積み補償をするかどうかは、会社の自由です。会社によっては、見舞金や弔慰金などの名目で支給されることもあります。

労災の上積み補償の問題

 労働災害の発生に会社に安全配慮義務違反があれば、会社は労働者に対して損害賠償義務を負います(安全配慮義務について参照)。労災の上積み補償が行われた場合、損害賠償との関係が問題になります。それは、損害賠償から労災の上積み補償を控除するのか?それとも、控除しないのか?という問題です。

労災の上積み補償の性質

 上積み補償は、労災保険の給付の不足分を補うものとして、一定の補償を上乗せするものです。その性質が問題となります。つまり、損害賠償の填補の性質を有しているのか?生活援助などの性質なのか?ということです。

 参考になる裁判例として、JFEスチールほか事件(東京地裁平成20年12月8日判決)が挙げられます。判決は、次のように述べ、上積み補償を損害賠償から控除しないと判断しています。

 「労災保険による遺族補償給付との調整規定の適用がなく、給付事由に該当すれば無条件に支払われ、そのうち業務外死亡弔慰金、特別弔慰金及び特別加算金は、いずれも上記調整規定が適用される遺族補償とは別に支払われること、また、特別加算金及び遺児年金は、父母または遺児の存在を要件としており、父母または遺児の生活援助を図る趣旨と解される」。

 一般的には、使用者が上積み補償を行うことでその限度で同一事由について労働者またはその遺族からの損害賠償責任を免れると解すべきであるとの見解もあります。

労災の上積み補償は損害賠償額の予定か?

 労災の上積み補償と損害賠償との関係をさらに進めていくと、使用者が損害賠償責任を負う場合に損害賠償の予定(民法420条1項)と解する余地が出てきます。

 損害賠償の予定だとすると、使用者は上積み補償を支払えば、損害賠償責任を免れることになります。通常は、上積み補償が損害賠償の予定であるとして、労働協約等によって損害賠償請求権を失うと解することはできないでしょう。

 ただし、労働協約等で損害賠償の予定であることを明示している場合、その定めが直ちに無効になるとまでは解されていません。上積み補償の額が不公平に低額である場合に個別に公序良俗違反として無効になると解されています。


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