じん肺の管理区分に関する最高裁判決を紹介します。
最高裁平成29年4月6日判決
じん肺の管理区分決定に関する最高裁判決がありました。労災に直接関係するものではありません。ただし、労災に関連するので紹介します。
この最高裁判決の理解のために、以下の未支給の労災保険給付の請求も参照してください。
事案の概要
建物設備管理等の作業に従事する労働者が、労働局長に対して、じん肺法15条1項に基づき、じん肺管理区分決定の申請を行いました。労働局長は、この申請に対して、管理1の決定を行いました。
そこで、申請を行った労働者は、労働局長の処分の取り消しを求めて、取消訴訟を提起しましたが、訴訟中に亡くなりました。その後、労働者の相続人がこの訴訟の地位を承継したとして訴訟承継の申立てを行いました。
本件訴訟の争点
じん肺法に基づく管理区分決定を受けるという労働者の地位を労働者の相続人が承継することができるか?というのが本件の争点です。
原審は、じん肺法に基づく管理区分決定を受けるという労働者の地位は、当該労働者に固有の一身専属的なものであるとして、相続人による訴訟承継を認めませんでした。
じん肺法と労災の関係
じん肺法は、粉じん作業に従事する労働者について、管理1から管理4までのじん肺管理区分を決定する手続きを定めています。最も重い管理4は「療養を要するもの」とされています。
労災保険は、業務上疾病として「粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症」を例示列挙しています(労基法規則別表第1の2)。労災の認定では、管理4と決定された労働者から労災保険の給付請求があった場合、じん肺管理区分決定通知書等を確認し、その健康診断を行った日に発病したものとみなし、労災保険の給付を行うとされています。
また、管理4以外の決定を受けた労働者からじん肺症に関する労災保険給付の請求があった場合、原則、随時申請を行うことを指導し、じん肺管理区分の決定を待って、その結論に応じて取扱うとされています。
最高裁の判断
最高裁は、じん肺法に基づく管理1の決定を受けた労働者が、当該決定の取消訴訟提起後に死亡した場合、労災保険法11条に規定する遺族がその訴訟を承継できると判断しました。
じん肺法が管理4と決定された者について、療養を要するとしているのは、労災保険がじん肺症を業務上疾病としていることに対応する規定である。管理4と決定した者について業務上疾病に当たるものとして労災保険給付が円滑かつ簡便に支給されるようにしたと解すことができる。
したがって、管理4に該当するじん肺にかかった労働者がじん肺管理区分決定を受けた場合、業務上疾病に該当するかどうかの実質審査を経ることなく労災保険給付の支給を受けることができる。
以上の帰結から、管理4に該当する決定があれば業務上疾病に該当するとの判断が行われるとしているので、管理1に該当する決定があった労働者が労災保険給付の請求をしたとしても、業務上疾病に該当しないとして、労災と認定されないことが確実である。
じん肺法に基づき管理1の決定を受けた労働者は、この決定を不服として取消しを求める法律上の利益を有する。労災保険法11条の遺族は、死亡した労働者が有していたじん肺に関する労災保険給付の請求権を承継的に取得する。
この法律上の利益は、当該労働者が死亡しても、当該労働者のじん肺に関する未支給の労災保険給付の請求権有する遺族がいる限り、失われることはない。
したがって、管理1に該当する決定を受けた労働者が取消訴訟の係属中に死亡した場合、その訴訟は労災保険11条の遺族において、承継することができる。