派遣労働者が労災事故に遭った場合、派遣先会社に損害賠償を請求することはできるでしょうか?
派遣労働者と労災
派遣労働者は、労働契約を締結した派遣元会社から派遣先会社に派遣され、派遣先会社の指揮命令を受けて労働する労働者です。当然、派遣労働者も労災保険の補償対象となる労働者です。
派遣労働者は、労災保険に関しては、派遣元会社の労災保険の適用を受けます。派遣労働者と労働契約を締結している派遣元会社が、労災保険法の労働者を使用する事業になります。
派遣契約と安全配慮義務
派遣労働者と労働契約を締結しているのは、派遣元会社です。したがって、労働契約を締結している派遣元会社は、使用者として安全配慮義務を負うのは当然です。
派遣労働者と派遣先会社との間には、直接の労働契約はありません。そのためか、派遣先会社は、直接雇用している労働者と比べて、派遣労働者の就労状況等に配慮しないといったケースが存在します。
しかし、派遣労働者は、派遣先会社の指揮命令下で労働をしています。つまり、派遣労働者が労務を提供する過程で、生命・身体・健康を守るという安全配慮義務を派遣先会社も負っています。
したがって、派遣労働者に対しては、派遣元会社と派遣先会社の双方が安全配慮義務を負っています。
安全配慮義務違反があった場合、派遣労働者は、派遣元会社と派遣先会社の両方に損害賠償請求をすることができます。
派遣先会社の安全配慮義務違反を認めた裁判例
アテスト事件(東京高裁平成21年7月28日判決)は、派遣先での長時間労働等により派遣労働者が過労自殺した事案です。
派遣先は、派遣元に代わり業務遂行に伴う疲労や心理的負担等が過度に蓄積して派遣労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っていたとし、派遣先の安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求を認めています。