厚労省から令和6年度の脳・心臓疾患の労災補償状況が公表されています。その概要を紹介します。
令和6年度の脳・心臓疾患の労災補償状況
令和6年度の脳・心臓疾患の労災の請求件数は、1,030件でした。労災かどうかの決定が行われたのは、783件でした。脳・心臓疾患が労災と認定されたのは、241件で、労災の認定率は30.8%でした。
この内、過労死の労災の請求件数は、255件でした。労災かどうかの決定が行われたのは、232件でした。労災と認定されたのは、67件で、労災の認定率は28.9%でした。
脳・心臓疾患の労災の請求件数は増加傾向ですが、昨年と比べるとほぼ同じ件数でした。
業種別の労災請求件数
脳・心臓疾患の労災請求権の多い業種の上位5つは、以下のとおりです。
業種 | 労災請求件数 |
道路貨物運送業 | 155件 過労死52件 |
その他の事業サービス業 | 81件 過労死14件 |
社会保険・社会福祉・介護事業 | 58件 過労死9件 |
総合工事業 | 57件 過労死20件 |
飲食店 | 43件 過労死10件 |
精神障害と比べると、脳・心臓疾患は過労死の割合が多いです。道路貨物運送業では、請求の33%以上が過労死です。
業種別の労災認定件数
脳・心臓疾患で、労災と認定された件数の多かった業種の上位5つは、以下のとおりです。
業種 | 労災認定件数 |
道路貨物運送業 | 76件 過労死21件 |
飲食店 | 19件 過労死3件 |
その他の事業サービス業 | 12件 過労死4件 |
総合工事業 | 8件 過労死3件 |
宿泊業 | 8件 |
労災の請求件数3位の社会保険・社会福祉・介護事業は、労災認定件数では上位15位までに入っていません。つまり、ほとんど労災と認定されていません。
職種別の労災認定件数
脳・心臓疾患の労災と認定された件数の多い職種の上位5つは、以下のとおりです。
職種 | 労災認定件数 |
自動車運転従事者 | 72件 過労死19件 |
飲食物調理従事者 | 15件 過労死1件 |
接客・給仕職業従事者 | 14件 過労死2件 |
法人・団体管理職員 | 14件 過労死5件 |
製品製造・加工処理従事者 (金属製品を除く) | 10件 過労死4件 |
年齢別の労災認定件数
年齢別の脳・心臓疾患の労災認定件数は、50代の129件(内、過労死35件)が最多です。次いで、40代の60件(内、過労死17件)、60歳以上の44件(内、過労死12件)と続きます。
精神障害の労災は、20代~50代まで、世代に関係なく労災認定されていました。対して、脳・心臓疾患の労災は、50代が53.5%と半数以上を占めています。
時間外労働時間数別の労災認定件数
脳・心臓疾患で、労災と認定された人を1か月又は2~6か月における1か月平均の時間外労働時間別にみると、上位は、以下のとおりです。
1か月平均の時間外労働時間数 | 労災認定件数 |
80時間~100時間未満 | 80件 過労死26件 |
60時間~80時間未満 | 46件 過労死15件 |
100時間~120時間未満 | 40件 過労死5件 |
120時間~140時間未満 | 21件 過労死5件 |
160時間~ | 16件 過労死3件 |
なお、45時間未満は0件、45時間~60時間未満は1件でした。20時間未満でも労災と認定されている精神障害との大きな違いです。
また、短期間の過重業務と異常な出来事で労災と認定されたのは27件(内、過労死10件)でした。
したがって、脳・心臓疾患の労災認定に当たっては、長時間労働が重要だということがわかります。