脳・心臓疾患の労災認定で問題になる過労死ラインを取上げます。
過労死ラインとは?

毎日、残業ばっかりで月100時間を超えてるかも…でも、仕方ないのかな。
過労死ラインって聞いたことあるけど…

それは危険だよ。
1か月に100時間の残業って、過労死ラインを超えてるよ。
長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられています。そして、脳・心臓疾患との関連性が強いという医学的知見があります。
脳・心臓疾患の労災認定において、長時間労働は重要視されています。「長期間の過重業務」に関する疲労の蓄積を評価する際の具体的な労働時間の目安が認定基準で定められています。この基準を一般に「過労死ライン」と呼んでいます。
長時間労働と脳・心臓疾患の発症
業務において、労働時間の長さが疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられています。長時間労働が、脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす理由は、以下のとおりです。
長時間労働が、脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす理由
①睡眠時間が不足する
②睡眠以外の休憩、休息、余暇活動の時間が不足・制限され、生活習慣に悪影響がある
③長時間、業務を遂行しないといけないこと自体が直接的な負荷要因
④就労態様による負荷要因へのばく露時間が長くなる
睡眠不足
疲労の蓄積をもたらす要因として、睡眠不足が深く関係します。
1日5時間~6時間程度の睡眠が確保できない状態が継続すると、短時間の睡眠の原因である長時間労働と脳・心臓疾患の発症との関連性は強いと評価されています。
過労死ライン
脳・心臓疾患の労災認定において、疲労の蓄積を評価する際の具体的な労働時間の目安が、過労死ラインです。過労死ラインを超える長時間労働が認められる場合は、業務による特に過重な負荷があった、つまり、労災と認定されます。
過労死ライン
①発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働を行った。
②発症前2か月間ないし6か月間にわたり、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働を行った。

以下の「脳・心臓疾患の労災認定基準における長期間の過重業務」も参照
過労死ラインに達しない場合

過労死ラインに達してないと、労災にならないの?

そうとは言い切れないよ。
残業が80時間未満でも労災とみとめられているケースがあるよ。
労働時間のみで業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと認められる水準に至らないが、過労死ラインに近い時間外労働に加え、一定の労働時間以外の負荷が認められる場合は、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと評価されます。

残業が45時間未満で労災と認められるケースはないようです。
労働時間以外の負荷要因として、認定基準は、以下の要因を挙げています。
労働時間以外の負荷要因
①勤務時間の不規則性
②出張・移動の多い業務
③心理的負荷を伴う業務
④作業環境

詳細は、以下の「脳・心臓疾患の労災認定基準における長期間の過重業務②」を参照
過労死ラインに関するよくある誤解
過労死ラインに関するよくある誤解をまとめました。
①過労死ラインを越えなければ安全?
過労死ラインは、脳・心臓疾患の労災認定において、疲労の蓄積を評価する際の具体的な労働時間の目安です。過労死ラインを越えなければ、労働者の心身に影響はないというわけではありません。
②過労死ラインを越えなければ労災にならない?
過労死ラインを越える残業をしていない場合でも、長時間労働以外の負荷要因による負荷が大きければ、労災と認められる可能性があります。
③一度、過労死ラインを越えても労災にならない?
「発症前2か月間ないし6か月間にわたり、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働を行った」というのが、過労死ラインです。これは、発症前2か月~6か月のいずれの月も80時間の時間外労働を行ったという意味ではありません。
まず、発症前1か月・2か月・・・6か月とそれぞれの時間外労働時間数を算出します。1か月の時間外労働時間数が最大となる月を評価の対象とします。つまり、発症前2か月~6か月のどれか1か月の時間外労働時間数が80時間を超えると、労災と認められます。
長時間労働が原因で脳・心臓疾患を発症した方へ
脳・心臓疾患の労災認定は、労災事故と比べて難しい類型です。過労の原因は長時間労働かもしれないと思ったら、一人で悩まずに、まずはご相談ください。
法律事務所エソラは、労災の初回相談は無料です。

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