- 1. 運送業の労災事故は…
- 2. 労災保険と損害賠償の違い
- 2.1. 労災保険
- 2.1.1. 労災保険の特徴
- 2.2. 損害賠償
- 2.3. 労災保険と損害賠償は併用できる
- 2.3.1. 労災保険と損害賠償
- 3. 運送業で問題になりやすい安全配慮義務
- 3.1. 物理的危険(車両・積荷・作業動線)
- 3.1.1. 物理的危険の例
- 3.2. 教育・マニュアル不足
- 3.2.1. 教育・マニュアル不足の例
- 3.3. 不十分な労務管理
- 3.3.1. 不十分な労務管理の例
- 4. 運送業で安全配慮義務違反が問題になるケース
- 4.1. 荷積み作業中に骨折
- 4.2. 長距離トラックの運転手が脳梗塞を発症
- 5. 損害賠償で請求できる内容
- 6. 会社に損害賠償請求するための証拠
- 6.1.1. 会社に損害賠償請求するために必要な証拠の例
- 7. 運送業で労災事故に遭われた方へ
運送業の労災事故は…

運送の仕事ってさ、事故が起きたら自分の責任って言われちゃうの?
だって長時間運転とか、無理なスケジュールとか…どう考えても会社の方がヤバい時あるじゃん…

事故は本人の不注意だけじゃなくて、会社の働かせ方に問題があるケースが本当に多いんだ。

えっ…じゃあさ、過労で判断力落ちて事故った場合とか、荷下ろし中にケガした場合とかも…?

労災は最低限の補償だけど、会社の安全配慮義務違反があれば損害賠償まで請求できるよ。
運送業は、長時間拘束・過密スケジュール・休憩未確保が問題になりやすい業界なんだ。
労災保険と損害賠償の違い
| 労災保険 | 会社への損害賠償 | |
| 目的 | 迅速かつ公正な保護のため必要な補償を行う | 被った損害の賠償 |
| 条件 | 業務中のケガ又は通勤途中のケガ | 会社に過失(安全配慮義務違反)がある場合 |
| 休業損害 | 平均賃金の60% (特別支給金を含めて80%) | 100% (労災保険の休業補償給付は控除) |
| 慰謝料 | 支給されない | 請求可能 |
労災保険
労災保険は、仕事中のケガ又は通勤途中のケガに対して必要な補償をする保険です。以下のような特徴があります。
労災保険の特徴
①無過失責任:会社に過失がなくても労災保険の給付を受けれる
②補償額の定率化:損害全てが補償されない
③慰謝料が支給されない
損害賠償
会社に安全配慮義務違反がある場合は、労災保険とは別に、会社に損害賠償請求できます。
会社は、労働契約上の信義則に基づく義務として、労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をする義務を負っています(労働契約法5条)。この義務を安全配慮義務といいます。安全配慮義務の内容は、作業環境の整備、安全装置の設置、教育、休憩、健康管理など多岐にわたります。
運送業では、教育不足や長時間労働をさせていたことが安全配慮義務として問題になることが多いです。
労災保険と損害賠償は併用できる
労災事故の発生に会社の安全配慮義務違反がある場合、被災した労働者は、労災保険と損害賠償をどちらも請求できます。通常は、労災保険の給付を受けた後、労災保険でカバーされない部分を会社に損害賠償請求するという流れになります。
労災保険と損害賠償
①労災保険でカバーされる部分:治療費、休業損害・後遺障害による逸失利益の一部
②労災保険でカバーされない部分:休業損害・後遺障害による逸失利益の一部、慰謝料
運送業で問題になりやすい安全配慮義務
運送業で安全配慮義務が問題になるのは、以下のようなケースです。
物理的危険(車両・積荷・作業動線)
物理的危険の例
①荷物の積み降ろし時の危険(高重量物・バラ積み・急な坂道)
②車両整備不良(タイヤ摩耗、ブレーキ不調)
③一人作業の強制(深夜・早朝の荷下ろし)
教育・マニュアル不足
教育・マニュアル不足の例
①荷物の積み降ろし作業手順の教育不足
②車両の操作・バック誘導の不備
③運転前点検の不十分な指導
不十分な労務管理
不十分な労務管理の例
①過密スケジュールの常態化
②長時間拘束(点呼→運転→荷下ろし→帰庫まで連続)
③休憩取得できない運行計画
運送業で安全配慮義務違反が問題になるケース
運送業で会社の安全配慮義務違反が問題になるケースを紹介します。
荷積み作業中に骨折
重量物の手積み・手降ろしを一人で行っていたところ、トラックの荷台から落下し腕を骨折した。会社は、「不注意による事故」だと主張し責任を否定。
トラックの荷台の上での荷物の積み降ろし作業が危険な作業にもかかわらず、会社が全く従業員に教育・指示をしていなかったことから、会社の安全配慮義務違反が認められた。
長距離トラックの運転手が脳梗塞を発症
拘束時間が連日15時間を超え、睡眠不足の状態で運転を余儀なくされた長距離トラックの運転手が脳梗塞を発症した。会社は、「適切に休憩を取るよう指導していた」と責任を否定。
直近数か月のタコメーターや運転日報などから過労死ラインを超える残業と、休息期間(勤務間インターバル)が確保されていないことが判明。会社の安全配慮義務違反が認められた。
損害賠償で請求できる内容
会社への損害賠償で請求できる損害は、以下のような労災保険でカバーされない損害です。
| 主な損害 | 注意点 |
| 休業損害 | 休業補償給付の受給分は請求できない |
| 後遺障害による逸失利益 | 障害補償給付の受給分は請求できない |
| 入通院慰謝料 | 労災保険では支給されない |
| 後遺障害による慰謝料 | 労災保険では支給されない |
介護が必要な重篤な後遺障害が残った場合は、将来の介護費や家屋改造費が損害として請求できます。
会社に損害賠償請求するための証拠
会社に損害賠償請求するためには、会社に安全配慮義務違反があったことを証明する必要があります。多くの証拠は、労災保険の請求の際に提出した証拠と共通します。
会社に損害賠償請求するために必要な証拠の例
運行記録(デジタコ・ドラレコ)
点呼記録
運転日報・業務日報
配送ルート・納品時間の指示書
積荷の伝票(荷量・時間)
勤怠データ(残業・休憩)
LINE・無線での指示ログ
運送業で労災事故に遭われた方へ
厳しい配送スケジュール、長時間拘束、荷積み荷降ろしの身体的負担など運送業は過酷な職種です。「事故はドライバーの不注意」「労災が出るからいいだろう」と会社に言いくるめられていませんか?
会社に「安全配慮義務違反」があれば、労災保険とは別に、会社に対して慰謝料や逸失利益などの損害賠償請求が可能です。
「会社との交渉が怖い」
「提示された示談金が適正かわからない」
「会社に損害賠償請求できるかわからない」
このようなことでお悩みの方は、一人で悩まずに、専門家である弁護士にご相談ください。法律事務所エソラは労災の初回無料相談を実施しています。

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