労災事故の典型である小売業における転倒事故を取上げます。
店舗内でつまづいた…

お客様の前で転んじゃって…情けなくて、恥ずかしくて…こんなの、自分の不注意だよね?

それは、労災になんだよ。つまづきが原因のことが多いけど、床が濡れてたり、そういう環境が原因のことも多いんだ。
小売業における転倒事故
厚労省が公表した令和6年の「労働災害発生状況」によると、転倒事故の死傷者数は36,378人でした。小売業における転倒事故の死傷者数は、6,114人でした。小売業における転倒事故は、労災事故の典型といえます。
小売業の内、食品スーパー及び総合スーパーにおける転倒事故の約90%が女性です。50代以上の約70%が骨折を伴う転倒事故です。
小売業における転倒事故の要因
①商品の補充中(棚の高所・低所への出し入れ)
②濡れた床・段差・バックヤードの障害物
③搬入・検品・倉庫作業中の転倒
小売業における転倒事故は労災の対象?
労災と認定されるには、①業務遂行性があることを前提に、②業務起因性があることが必要です。
労働者が業務に従事していれば、業務遂行性が認められます。業務起因性は、業務に内在する危険が現実化したという要件です。
店頭、バックヤードでの作業中に発生した転倒事故は、業務遂行性・業務起因性ともに認められます。
主な労災保険の補償
陸上貨物運送業における転倒事故で労災と認定された場合の主な労災保険の補償は、以下のとおりです。
治療費
労災保険から治療費が支給されます。労災の指定病院で治療を受けた場合は、病院へ直接、支払われます。労災の指定病院以外で治療を受けた場合は、いったん、治療を立替える必要があります。

詳しくは、以下の「労災の治療費」を参照
休業補償
療養のため仕事ができなかった場合、休業補償給付が支給されます。休業補償給付は、給付基礎日額の60%が支給されます。休業補償給付とは別に、特別支給金として給付基礎日額の20%が支給されます。

詳しくは、以下の「休業(補償)給付」を参照
障害補償給付
後遺障害が残った場合、後遺障害等級に応じて障害補償給付が支給されます。1級~7級は年金、8級~14級は一時金として支給されます。

詳細は、以下の「障害(補償)給付」を参照
小売業における転倒事故のよくある誤解と注意点
小売業における転倒事故について、よくある誤解と注意点をまとめました。
| よくある誤解 | 正しい理解 |
| 自分の不注意で転倒したから労災じゃない | 労働者に不注意があっても労災になる |
| 転倒事故は大した事故じゃない | 骨折の場合、後遺障害が残る可能性がある |
| パート・アルバイトだから労災は関係ない | 正社員でなくても労災の対象 |
小売業における転倒事故に遭った際のチェックリスト
小売業における転倒事故に遭った際の行動チェックリストです。参考にしてみてください。
| チェック項目 | 確認ポイント |
| □作業中の転倒事故 | 日時、場所、作業内容、床の状況、事故状況を記録 防犯カメラの映像の確保 |
| □医師の診断書の入手 | 医師に業務中の事故と伝える 労災指定病院の場合は診断書は不要 |
| □労災保険の請求に必要な資料・書類の入手 | 労基署や弁護士に相談し確認 |
| □労災保険の請求 | 会社が労災保険の請求をしてくれない場合は自分でする |
| □弁護士に相談 | 特に会社が労災保険の請求をしてくれない場合は弁護士に相談するのをおすすめ |
小売業における転倒事故の事例
50代女性のパート従業員が、スーパー店内の床に落ちた水滴で足を滑らせ転倒し橈骨遠位端骨折。
「お客様の前で転ぶなんて…」と恥ずかしさから報告をためらったが、同僚の勧めで労災保険を請求。労災として認定され、休業補償を受ける。
小売業における転倒事故でケガをされた方へ
小売業における転倒事故は、労災事故の典型です。直ちに、会社に報告し、病院で治療を受けましょう。そして、日時・場所・床の状況・作業内容といった事故状況を整理し、労災保険の請求をしましょう。
会社が労災保険の請求の手続きに協力的でない場合は、一人で悩まず、弁護士に相談することで、労災保険の補償を受けられる可能性が広がります。法律事務所エソラは、労災の初回相談は無料です。

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