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労災の損害賠償と工作物責任


民法717条は、土地工作物責任について規定しています。労災事故には、土地の工作物の瑕疵によって発生するものも多く、工作物責任による損害賠償請求を行うことが考えられます。

工作物責任とは?

 民法717条は、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があるために、他人に損害を生じさせたとき、工作物の占有者又は所有者に損賠賠償責任を課しています。これを工作物責任といいます。

 工作物責任を負うのは、工作物の占有者です。占有者は、損害発生防止に必要な注意をしたことを立証できれば、賠償責任を免れます。

 占有者が賠償請求を免れた場合は、所有者が無過失責任を負うことになります。

工作物責任の要件

 工作物責任によって、占有者又は所有者の責任を追及するには、以下の3つの要件を充足する必要があります。

工作物責任の要件

①工作物の設置又は保存に瑕疵がある

②損害が発生した

③①と②の因果関係がある

工作物

 工作物責任が生じる工作物とは、判例によって概念が拡張されてきました。土地に接着して人工的作業を加えることで成立したものである必要はなく、工場内に据え付けられた機械も土地の工作物に当たると解されています。

瑕疵

 瑕疵とは、そのものが本来備えているべき性質・機能を欠いている状態のことを意味します。

 労災事故では、工場に据え付けられた機械に安全装置が取り付けられておらず、そのことによって、労災事故が発生した場合、工作物に瑕疵があるとして、占有者である使用者の賠償責任が認められる事案が典型です。


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