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使用者からの弔慰金と損益相殺(労災の損害賠償)


安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求において、使用者からの弔慰金等が損益相殺の対象になるか?を判断した裁判例を紹介します。

JFEスチールほか事件(東京地裁平成20年12月8日判決)

 労働者が出向中に、使用者の安全配慮義務違反により過重な長時間労働を強いられた結果、うつ病に罹患し、自殺したとして損害賠償を請求した事案です。会社が遺族に支払った弔慰金を損害賠償から控除できるか?が争点になりました。

にゃソラ

以下の「労災の上積み補償と損害賠償」も参照

労災の上積み補償と損害賠償

労災保険の給付とは別に、会社によっては、会社から上積み補償が支給されることがあります。労災の上積み補償を解説します。

事案の概要

 原告らが、原告X1の夫であり、原告X2及び原告X3の父であるCは、被告Aに在籍中被告Bに出向していたところ、被告らの安全配慮義務違反により過重な長時間労働を強いられた結果、うつ病に罹患し、平成13年8月20日にうつ病により自殺を図り死亡したとして、被告らに対し、不法行為責任又は債務不履行責任に基づき、連帯して、損害賠償を求めた。

裁判所の判断

 まず、裁判所は、使用者らの安全配慮義務違反を認めました。その上で、弔慰金等の損益相殺について、次のように判断しています。

 被告Bが、原告X1に支払った弔慰金等合計4,364万円は、いずれも、労働者災害補償保険法による遺族補償給付との調整規定の適用がなく、給付事由に該当すれば無条件に支払われ、そのうち業務外死亡弔慰金、特別弔慰金及び特別加算金は、いずれも上記調整規定が適用される遺族補償とは別に支払われること、また、特別加算金及び遺児年金は、父母または遺児の存在を要件としており、父母または遺児の生活援助を図る趣旨と解されることを考慮すれば、上記弔慰金等は、主として弔意及び遺族の生活援助の趣旨で支給されたものと解するのが相当である。 

 したがって、Cの死亡による損害を填補するとは言えないから、これらを損害から控除することはできない。

  よって、弔慰金等について損益相殺すべきであるとする被告らの主張は、採用することができない。


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