脳・心臓疾患の新しい労災認定基準の短期間の過重業務を取上げます。
短期間の過重業務
脳・心臓疾患の労災認定基準は、業務による過重負荷の判断を①長期間の過重業務、②短期間の過重業務、③異常な出来事の3つの類型に分けて判断しています。
②短期間の過重業務は、発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労した類型です。
特に過重な業務
特に過重な業務の意味は、長期間の過重業務と同様です。すなわち、日常業務に比較して特に過重な身体的・精神的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務を意味します。
日常業務が、通常の所定労働時間内の所定業務内容を意味するのも同じです。
評価期間
短時間の過重業務の評価期間は、発症前おおむね1週間です。
発症前1週間より前の業務は、原則として長期間の負荷として評価されます。ただし、発症前1か月間より短い期間のみに過重な業務が集中し、それより前の業務の過重性が低いので、長期間の過重業務とは認められない場合は、発症前1週間を含めた当該期間に就労した業務の過重性を評価し、それが特に過重な業務と認められるときは、短期間の過重業務に就労したものと扱われます。
過重性の判断の基本
特に過重な業務に就労したと認められるか?は、業務量・業務内容・作業環境等を考慮し、同種労働者にとっても、特に過重な身体的・精神的負荷と認められる業務であるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断されます。
具体的な過重性の判断
業務による過重な負荷は、発症に近ければ近いほど影響が強いと考えられます。そのため、以下のように、業務と発症との時間的関連を考慮して過重性が判断されます。
①発症に最も密接な関連性を有する業務は、発症直前から前日までの間の業務であるので、まず、この間の業務が特に過重であるか否かを判断する。
②発症直前から前日までの間の業務が特に過重であると認められない場合であっても、発症前おおむね1週間以内に過重な業務が継続している場合には、業務と発症との関連性があると考えられるので、この間の業務が特に過重であるか否かを判断する。
発症前おおむね1週間以内に過重な業務が継続している場合とは、この期間中に過重な業務に就労した日が連続していることを意味します。
したがって、発症前おおむね1週間以内に就労しなかった日があったとしても、このことを理由に、直ちに業務起因性が否定されるわけではありません。
業務の過重性の具体的な評価
脳・心臓疾患の労災認定基準では、以下の負荷要因を十分検討するようにとしています。
(1)労働時間
労働時間の長さは、業務量の大きさを示す指標であり、また、過重性の評価の最も重要な要因と位置付けています。したがって、評価期間における労働時間は重要になります。
発症直前から前日までの間の労働時間数・発症前1週間の労働時間数・休日の確保の状況等の観点から検討し、評価されます。
以下の場合は、業務と発症との関係性が強いと評価されます。
業務と発症の関連性が強いと評価される場合
①発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められる場合
②発症前おおむね1週間継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合等
なお、手待時間が長いなど特に労働密度が低い場合は除外されます。
(2)労働時間以外の負荷要因
労働時間以外の負荷要因については、長期間の過重業務と同様に評価します。ただし、作業環境は、付加的に考慮するのではなく、他の負荷要因と同様に評価されます。