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脳・心臓疾患の労災認定基準における長期間の過重業務②


脳・心臓疾患の新労災認定基準における長期間の過重業務の過重性の評価を取上げます。

脳・心臓疾患の労災認定基準における長期間の過重業務

 脳・心臓疾患の労災認定基準は、業務による過重負荷の判断を①長期間の過重業務、②短期間の過重業務、③異常な出来事の3つの類型に分けて判断することになっています。

 ①長期間の過重業務は、発症前の長期間にわたって、著しい疲労をもたらす特に過重な業務に就労した類型です。その過重性の評価の内、労働時間については、取上げました。

脳・心臓疾患の労災認定基準における長期間の過重業務

脳・心臓疾患の新労災認定基準における長期間の過重業務の概要を説明します。

 そして、労働時間以外の負荷要因は、項目のみを取上げました。そこで、今回、労働時間以外の負荷要因の過重性評価を取上げます。

勤務時間の不規則性

 認定基準では、勤務時間の不規則性として、以下の4つを挙げています。

勤務の不規則制

①拘束時間の長い業務

②休日のない連続勤務

③勤務間インターバルが短い勤務

④不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務

①拘束時間の長い業務

 拘束時間とは、労働時間・休憩時間その他の使用者に拘束されている時間のことです。つまり、始業時間から終業時間までの時間が拘束時間です。

 拘束時間数、実労働時間数、労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)、休憩・仮眠時間数・回数、休憩・仮眠施設の状況(広さ・空調・騒音等)、業務内容等の観点から検討し、過重性を評価します。

②休日のない連続勤務

 連続労働日数・連続労働日と発症との近接性・休日の数・実労働時間数・労働密度(実作業時間と手待時間との割合等)・業務内容等の観点から検討し、過重性を評価します。

 休日のない連続勤務が長く続くほど業務と発症との関連性をより強めると評価されます。一方、休日が十分確保されている場合は、疲労は回復ないし回復傾向を示すと評価されます。

③勤務間インターバルが短い勤務

 勤務間インターバルとは、終業から始業までの時間のことです。その程度(時間数・頻度・連続性等)や業務内容等の観点から検討し、評価されます。

 長期間の過重業務の判断では、睡眠時間の確保の観点から、勤務間インターバルがおおむね11時間未満の勤務の有無・時間数・頻度・連続性等について検討し、評価されます。

④不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務

 認定基準のいう不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務は、予定された始業・終業時刻が変更される勤務、予定された始業・終業時刻が日や週等によって異なる交替制勤務(月ごとに各日の始業時刻が設定される勤務や、週ごとに規則的な日勤・夜勤の交替がある勤務等)、予定された始業又は終業時刻が相当程度深夜時間帯に及び夜間に十分な睡眠を取ることが困難な深夜勤務のことをいいます。

 以下の観点から検討し、評価されます。

不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務の評価のポイント

予定された業務スケジュールの変更の頻度・程度・事前の通知状況

予定された業務スケジュールの変更の予測の度合

交替制勤務における予定された始業・終業時刻のばらつきの程度

勤務のため夜間に十分な睡眠が取れない程度(勤務の時間帯や深夜時間帯の勤務の頻度・連続性)

一勤務の長さ(引き続いて実施される連続勤務の長さ)

一勤務中の休憩の時間数及び回数、休憩や仮眠施設の状況(広さ、空調、騒音等)

業務内容及びその変更の程度等

事業場外における移動を伴う業務

 認定基準では、①出張の多い業務と②その他事業場外における移動を伴う業務を挙げています。

①出張の多い業務

 出張は、事業主の指揮命令により、特定の用務を果たすために通常の勤務地を離れて用務地へ赴き、用務を果たして戻るまでの一連の過程のことです。

出張の過重性の評価

以下の観点から検討・評価し、出張による疲労回復状況等を踏まえて過重性を評価する。

出張(特に時差のある海外出張)の頻度、出張が連続する程度、出張期間、交通手段

移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、出張先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況

出張中における睡眠を含む休憩・休息の状況、出張中の業務内容等

 なお、飛行による時差は、時差の程度(特に4時間以上の時差の程度)・時差を伴う移動の頻度・移動の方向等の観点から検討し、評価するとされています。

②その他事業場外における移動を伴う業務

 移動(特に時差のある海外への移動)の頻度、交通手段、移動時間及び移動時間中の状況、移動距離、移動先の多様性、宿泊の有無、宿泊施設の状況、宿泊を伴う場合の睡眠を含む休憩・休息の状況、業務内容等の観点から検討し、評価されます。さらに、移動による疲労の回復状況等も踏まえて過重性を評価します。

心理的負荷を伴う業務

 心理的負荷表に基づいて過重性が判断されます。心理的負荷表は、①別表1の日常的に心理的負荷を伴う業務と②別表2の心理的負荷を伴う具体的出来事の2つがあります。

 別表1は、以下のとおりです。別表2は、基本的に、精神障害の労災認定基準の心理的負荷表と同じ出来事になっています。

具体的業務 負荷の程度を評価する視点
常に自分・他人の生命・財産が脅かされる危険性を有する業務 危険性の度合・業務量(労働時間・労働密度)・就労時間・経験・適応能力・会社の支援・予想される被害の程度等
危険回避責任がある業務
人命・人の一生を左右しかねない重大な判断・処置が求められる業務
極めて危険な物質を取扱う業務
決められた時間どおりに遂行しなければならいような困難な業務 阻害要因の大きさ・達成の困難性・ペナルティの有無・納期等の変更の可能性等 業務量(労働時間・労働密度)・就労期間・経験・適応能力・会社の支援等
周囲の理解・支援のない状況下での困難な業務 業務の困難度・社内での立場等

作業環境

 長期間の過重業務に関して、作業環境は付加的に、評価されます。

①温度環境

 寒冷・暑熱の程度、防寒・防暑衣類の着用の状況、一連続作業時間中の採暖・冷却の状況、寒冷と暑熱との交互のばく露の状況、激しい温度差がある場所への出入りの頻度、水分補給の状況等の観点から検討し、評価されます。

②騒音

 おおむね80㏈を超える騒音の程度、そのばく露時間・期間、防音保護具の着用の状況等の観点から検討し、評価されます。


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