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石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚の労災認定


アスベストによる疾病の内、石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚の労災認定を取上げます。

石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚

 石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚は、業務上疾病として例示列挙されています(労基法施行規則別表1の2第4号7)。

良性石綿胸水

 良性石綿胸水は、以下の4つを満たす疾病です。

良性石綿胸水の要件

①石綿ばく露歴がある

②胸部レントゲン写真又は胸水穿刺で胸水の存在が確認される

③石綿ばく露以外に胸水の原因がない

④胸水確認後3年以内に悪性腫瘍を認めない

 良性とは、④悪性腫瘍ではないという意味です。決して予後が良好というわけではありません。良性石綿胸水の診断は3年間の経過観察が必要です。そのため、確定診断を下すのが難しい疾患です。

アスベストばく露との関係

 アスベストのばく露量が多いほど発症率が高い疾患です。特に、中・高濃度者では、10年以内に良性石綿胸水が発症すると言われています。

 アスベストばく露開始時期から発症までの期間は、平均で40年とされています。15年以内に発症することもあります。

症状

 半数近くは、自覚症状がないとされています。症状がある場合は、以下のような症状が見れらます。

良性石綿胸水の症状

①胸痛

②発熱

③咳嗽

④呼吸困難

 胸水の性状は、滲出液で、半数が血性です。治療なしで軽快する場合が多いです。再発率が25%~40%とされています。

 良性石綿胸水の胸水が消失した後、約半数は、びまん性胸膜肥厚が残ります。予後不良の要因が、びまん性胸膜肥厚と胸膜中皮腫の併発です。

びまん性胸膜肥厚

 びまん性胸膜肥厚は、臓側胸膜の病変です。壁側胸膜との癒着を伴います。

アスベストばく露との関係

 高濃度アスベストばく露者におけるびまん性胸膜肥厚の頻度は、低くありません。びまん性胸膜肥厚とアスベストばく露の関係は、胸膜プラークと比べて特異度が低いとされています。びまん性胸膜肥厚は、必ずしもアスベストによるとは限りません。

症状

 初期の症状は、無症状か労作時の呼吸困難にとどまることが多いです。進行すると、Hugh-Jones分類のⅣ・Ⅴ程度の呼吸困難をきたす場合があります。

 石綿肺の所見がないびまん性胸膜肥厚は、肺拡散機能は正常です。しかし、肺活量、全肺気量、静脈コンプライアンスが低下します。そのため、肺機能障害をきたすことが明らかにされています。びまん性胸膜肥厚が進行し、肺機能障害が著しく慢性呼吸不全状態に陥ると、在宅での酸素療法の適応となります。

労災の認定

 石綿にさらされる業務による良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚の労災認定は、「石綿による疾病の認定基準について(平成24年3月29日基発329第2号)」によって行われます。

良性石綿胸水

 胸水は、アスベスト以外に様々な原因で発症します。良性石綿胸水の診断は、アスベスト以外の胸水の原因をすべて除外することで行われます。

 したがって、診断が非常に困難なため、労基署長が厚労省本省と協議した上で、労災かどうかを判断することとされています。

 労災認定に際しては、胸部エックス線写真、CT画像、臨床所見、臨床経過、臨床検査結果、他疾患との鑑別根拠等の医証が必要です。

びまん性胸膜肥厚

 石綿ばく露労働者に発生したびまん性胸膜肥厚で、肥厚の広がりが以下の一定基準に達し、著しい呼吸困難を伴うもので、石綿ばく露作業従事期間が3年以上ある場合、労災と認定されます。

にゃソラ

石綿ばく露作業については、以下の「アスベストによる疾病の労災認定」を参照

アスベストによる疾病の労災認定

労災の業務上疾病の内、アスベスト(石綿)による疾病の労災認定について解説します。

びまん性胸膜肥厚が業務上疾病と認めれる要件

(1)胸部CT画像上、片側のみ肥厚がある場合は側胸壁の2分の1以上、両側に肥厚がある場合は側胸壁の4分の1以上

(2)以下のいずれかの著しい呼吸機能障害を伴う

 ①パーセント肺活量が60%未満

 ②パーセント肺活量が60%以上80%未満で、1秒率が70%未満、かつ、パーセント一秒量が50%未満又は動脈血酸素分圧が60Torr以下若しくは肺胞気動脈血酸素分圧較差が限界値を超える


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