労基法19条1項は,労働者が業務上負傷し,または疾病にかかり療養のために休業している期間とその後30日間は解雇できないと規定しています(解雇制限については労災と解雇制限参照)。今回は制限される「解雇」について取り上げます。

解雇制限の対象となる解雇

 労基法19条1項は,制限される解雇について,労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合を除外していません(労基法20条1項但書参照)。

 したがって,普通解雇のみならず,懲戒解雇も含むと解されています。神戸地裁昭和47年8月21日決定も懲戒解雇を含むと判断しています。

解雇予告期間との関係

 労働者を解雇するには,解雇予告を行う必要があります。では,労基法19条1項の解雇制限の期間中に解雇予告を行うことはできるのでしょうか?

 たとえば,症状固定日に30日を経過した日に解雇すると意思表示をした場合,30日経過後に解雇の効力が生じるのか?という問題です。

 裁判例は,解雇制限期間内の解雇を禁止しているのであって,解雇欲を制限していないとして,解雇制限期間内の解雇予告は有効であと判断しています(大阪地裁平成4年6月1日決定,東京地裁平成21年3月27日決定)。

解雇予告期間中に労災で休業した場合

 使用者が労働者に対して解雇予告を行った後,解雇予告期間中に労働者が業務上災害によって休業することになった場合,解雇予告期間が経過しても,解雇制限期間中は解雇することはできません。

 この場合,すでに行った解雇予告は有効で,解雇の効力が停止されるのみと解されています。したがって,労基法19条1項の解雇制限期間が経過すれば,解雇の効力が発生します。

 もっとも,療養が長期化して,解雇予告としての効力を失うと認められる場合は,改めて解雇予告が必要という通達があります。

合意退職との関係

 労基法19条1項で制限されているのは使用者による解雇です。労働者が自ら退職する合意退職は制限されません。

 労働者が業務上疾病であるにもかかわらず,私傷病だと思い退職届を提出した場合,動機の錯誤があり,動機を使用者に表示していた場合は退職の意思表示は無効であるという裁判例があります(東京高裁平成24年10月18日判決)。

定年退職との関係

 就業規則で定年に達したことにより雇用契約が自動的に終了するという内容の定年退職規定があり,定年に達したら当然に雇用契約が消滅するという慣行があって,それが従業員に徹底されている場合は,労基法19条1項の解雇制限の問題にはなりません(昭和26年8月9日基収3388号)。

期間の定めのある労働契約

 期間の定めのある労働契約で使用者が労働契約の更新を拒否した場合,解雇ではなく,契約期間の満了により労働契約が終了するので,労基法19条1項の解雇制限の問題は生じません。

 ただし,雇止め法理の適用がある場合は,解雇と同視され,労基法19条1項の解雇制限の適用があると解されています(雇止め法理参照)。