肺塞栓症の労災認定を取上げます。
脳・心臓疾患の労災認定基準の対象疾病
脳・心臓疾患の労災認定基準は、大きく①脳血管疾患と②虚血性心疾患の2つを対象疾病としています。
動脈の閉塞・解離
動脈の閉塞・解離は、業務による過重負荷によって発症する場合があります。
脳・心臓疾患の労災認定基準の対象疾病以外で業務による過重負荷によって発症したと認められた疾病には、以下のようなものがあります。
脳・心臓疾患の労災認定基準の対象疾病以外で業務による過重負荷によって発症したと認められた疾病
下肢動脈急性閉塞
S状結腸壊死
上腸間膜動脈塞栓症
網膜中心動脈閉塞症
椎骨動脈解離
これらの疾病の発生原因は様々です。したがって、常に脳・心臓疾患の労災認定基準の考え方によって労災認定の判断ができるわけではありません。あくまでも個別の事案ごとに様々な事情を考慮した上で判断されます。
なお、専門検討会では、動脈の閉塞・解離以外の疾病が業務による過重負荷によって発症することを想定していません。したがって、一般的な業務上疾病の判断枠組みに従って個別に労災認定の判断がなされます。
肺塞栓症
肺塞栓症は、深部静脈血栓症で生じた血栓が、静脈血流により肺動脈を閉塞し、肺循環障害が起きる疾病です。
深部静脈血栓症は、深部静脈系に血栓を生じ、静脈閉塞を起こすものをいいます。血栓は下肢に発生することが多いとされています。
肺塞栓症とその原因である深部静脈血栓症は、静脈系の疾患で、動脈硬化等を基礎とする対象疾病と発生機序が異なることから脳・心臓疾患の労災認定基準の対象疾病以外とされています。
肺塞栓症等については、業務による座位等の状態及びその継続の程度等が、深部静脈における血栓形成の有力な要因であったといえる場合には、別表第1の2第3号5の「その他身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に起因することの明らかな疾病」として、業務上疾病として労災と認定される可能性があります。