厚労省から令和2年度の脳・心臓疾患の労災補償状況が公表されています。その概要を取上げます。
令和2年度 脳・心臓疾患の労災補償状況
令和2年度は、脳・心臓疾患に関する労災保険の請求が784件あり、665件について決定がなされました。労災と認定されたのは、194件で認定率は29.2%でした。
その内、過労死の請求件数は、205件あり、211件について決定がなされました。過労死で労災と認定されたのは、67件で、認定率は31.8%でした。
業務種別の労災保険請求件数
脳・心臓疾患の労災保険の請求件数が多かった業種の上位5つは、以下のとおりです。
①運輸業・郵便業:158件(内過労死47件)
②卸売業・小売業:111件(内過労死27件)
③建設業:108件(内過労死30件)
④製造業:92件(内過労死27件)
⑤医療・福祉:67件(内過労死13件)
業種別の労災認定件数
脳・心臓疾患の労災に関し、労災と認定された件数が多かった業種の上位5つは、以下のとおりです。
①運輸業・郵便業:58件(内過労死19件)
②卸売業・小売業:38件(内過労死12件)
③建設業:27件(内過労死11件)
④製造業:17件(内過労死8件)
⑤宿泊業・飲食サービス業:15件(内過労死3件)
ちなみに、請求件数で5位の医療・福祉は、労災の認定件数では6位でした。
業種別の労災認定件数②
脳・心臓疾患で労災と認定された件数の多い業種をさらに絞ると、上位5つは、以下のとおりです。
①運輸業・郵便業の道路貨物運送業:55件(内過労死19件)
②卸売業・小売業の飲食料品小売業:16件(内過労死6件)
③建設業の総合工事業:12件(内過労死6件)
④建設業の設備工事業:11件(内過労死3件)
⑤宿泊業・飲食サービス業の飲食店:8件(内過労死2件)
職種別の労災認定件数
脳・心臓疾患で労災と認定された件数の多い職種の上位5つは、以下のとおりです。
①輸送・機械運転従事者の自動車運転従事者:58件(内過労死22件)
②販売従事者の商品販売従事者:19件(内過労死7件)
③専門的・技術的職業従事者の建築・土木・測量技術者:14件(内過労死6件)
④サービス職業従事者の飲食物調理従事者:11件(内過労死0件)
⑤管理的職業従事者の法人・団体管理職員:10件(内過労死4件)
年齢別の労災認定件数
脳・心臓疾患で労災と認定された人を年齢別でみると、50代の65件が最も多く、次いで40代の64件・60代以上の44件と続きます。
時間外労働時間別の労災認定件数
脳・心臓疾患で労災と認定された人を1か月又は2~6か月における1か月平均の時間外労働時間別にみると、上位は以下のとおりです。
①80時間以上100時間未満:79件(内過労死28件)
②100時間以上120時間未満:45件(内過労死16件)
③120時間以上140時間未満:19件(内過労死7件)
④60時間以上80時間未満:17件(内過労死5件)
⑤140時間以上160時間未満:12件(内過労死2件)
なお、80時間未満で労災と認定されたものには、不規則な勤務・拘束時間の長い勤務・交代制勤務・深夜勤務といった労働時間以外の負荷要因を認めたものが含まれています。ちなみに、60時間未満で労災と認定された件数は0となっています。脳・心臓疾患の労災認定においては、長時間労働が重要な要素だといえます。