労基法の災害補償

 労基法の第8章に災害補償の規定があり,業務上の負傷,疾病,障害,死亡について,使用者の補償責任を定めています。労基法の災害補償のポイントは次のとおりです。

①無過失責任である

 民法と異なり,使用者の無過失責任です。労働者としては,使用者の故意・過失を立証する必要はありません。「業務上」であることを立証すれば足ります。

②実損額を填補するわけではない

 金銭給付の場合,平均賃金をもとに算定された定率的な補償が行われます。労働者の実際の損害が填補されるわけではありません。

③罰則等で実効性を確保している

 民法の不法行為であれば,賠償義務者の不履行に対し,罰則はありませんが,行政指導や罰則により,実効性が制度上は確保されています。

災害補償の補償内容

 労基法上,義務付けられている補償としては,次のものがあります。

 ①療養補償,②休業補償,③打切り補償,④障害補償(分割補償を含む),⑤遺族補償(分割補償を含む),⑥葬祭料

災害補償から労災保険へ

 労基法の災害補償は,法律上,労災補償の基本法ですが,現実には,ほとんど機能していません。災害補償は,①使用者に支払い能力がなければ補償されないこと,使用者の資力等も踏まえ,②必要最低限の補償のため,水準が低いという問題がありました。

 労災保険法は,制定当初は,労基法と同じ内容,同じ水準の補償しか規定がありませんでした。しかし,数度の改正を経て,適用対象,給付内容・水準ともに拡大し,現在,労災補償の基本は労災保険が担っています。

労災保険との関係

 災害補償事由について,労災保険に基づき労基法の補償に相当する給付が行われる場合,使用者は,補償責任を免れます。では,労基法の災害補償には意味はないかというと,限定的に機能する場面があります。

 労災保険の休業補償給付は,待期期間が設けられています。この待期期間については,労基法の災害補償として使用者に支払い義務があります。