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労災の損害賠償と民法改正


民法の債権法が全面的に改正されます。民法改正後、労災の損害賠償にも少なからず影響してきます。労災の損害賠償が民法改正によってどのように変わるのかを見ておこうと思います。

民法の改正と労災の損害賠償の影響

 交通事故と違い、労災の損害賠償には、①不法行為構成と②債務不履行構成があります(不法行為と債務不履行参照)。不法行為に関しては、交通事故で取り上げています(民法改正と交通事故の損害賠償を参照してください。)。

不法行為の時効は長く、債務不履行の時効は短くなる

 現行民法は、不法行為の消滅時効期間は損害を知った時から3年間、債務不履行の消滅時効期間は権利を行使できる時から10年間です。

民法改正によって、消滅時効期間は、不法行為・債務不履行ともに5年間になる

(債権等の消滅時効)

第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。

 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)

第百六十七条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)

第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。

 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)

第七百二十四条の二 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

 民法改正後の債務不履行構成の消滅時効期間は、①主観的起算点から5年、②客観的起算点から20年です。一方、不法行為構成の消滅時効期間も、①損害及び加害者を知った時から5年、②不法行為と時から20年です。

 したがって、債務不履行構成と不法行為構成で消滅時効期間に関して差がなくなります。

2020年4月1日より前に労働契約が締結されている場合

 上記のとおり、民法改正後は、債務不履行構成と不法行為構成で消滅時効期間の差がなくなります。しかし、労働契約が改正民法施行日の2020年4月1日より前に締結されている場合は、注意が必要です。

(時効に関する経過措置)

第十条 施行日前に債権が生じた場合(施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む。以下同じ。)におけるその債権の消滅時効の援用については、新法第百四十五条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

 施行日前に旧法第百四十七条に規定する時効の中断の事由又は旧法第百五十八条から第百六十一条までに規定する時効の停止の事由が生じた場合におけるこれらの事由の効力については、なお従前の例による。

 新法第百五十一条の規定は、施行日前に権利についての協議を行う旨の合意が書面でされた場合(その合意の内容を記録した電磁的記録(新法第百五十一条第四項に規定する電磁的記録をいう。附則第三十三条第二項において同じ。)によってされた場合を含む。)におけるその合意については、適用しない。

 施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による。

 2020年4月1日より前に債権が生じた場合、その債権の消滅時効は、改正前の民法が適用されます。債権が生じたのは、2020年4月1日以降でも、その原因となる法律行為が2020年4月1日より前に生じていれば、改正前の民法が適用されます。

 債務不履行構成の場合、安全配慮義務の根拠は、労使間の労働契約です。したがって、労働契約は、原因となる法律行為に該当します。労災事故が、2020年4月1日以降に発生した場合でも、労働契約がそれより前に締結されている場合は、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間は、改正前民法に基づきます。つまり、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は権利を行使できる時から10年間です。

遅延損害金の法定利率の基準時

 改正民法は、法定利率について緩やかな変動制を採用します。そのため、遅延損害金の利率を算定する際の基準時が、問題となりえます。

 

(金銭債務の特則)

第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。【以下省略】

 債務不履行構成の場合の遅延損害金の算定に用いる法定利率は、損賠賠償請求時の利率によることになります。

中間利息控除の法定利率の基準時

 死亡による逸失利益や後遺障害による逸失利益の算定に際しては、中間利息を控除する必要があります。 

(中間利息の控除)

第四百十七条の二 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。

 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。

(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)

第七百二十二条 第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。

 中間利息控除に用いられる法定利率の基準時は、不法行為構成は不法行為時、債務不履行構成は義務違反時となるので、両者で差がないことになります。

 債務不履行構成の場合、法定利率の基準時は、前述の遅延損害金と中間利息控除で異なることになります。


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