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過労死・過労自殺の損害賠償請求


過労死・過労自殺の損害賠償におけるリーディングケースとなった最高裁判決を紹介します。

電通事件最高裁判決(平成12年3月24日判決)

 労働災害の発生に関して、使用者に安全配慮義務違反がある場合、労働者は使用者に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求ができます(安全配慮義務について参照)。

 長時間・過重な労働をさせたことによる過労死過労自殺も同様に、使用者に安全配慮義務違反がある場合、労働者の遺族(主として相続人)は、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求をすることができます。

 その際の使用者の安全配慮義務の具体的な内容に関しては、最高裁平成12年3月24日判決(電通事件)がリーディングケースになっています。そこで、最高裁がどのような判断をしたのかを触れておこうと思います。

事案の概要

 企業名が明らかになっていますが、大手広告代理店に勤務する労働者が、長時間にわたり残業を行う状態を1年余り継続した後、うつ病にかかり自殺したという事案です。

争点

 会社の不法行為責任(民法715条の使用者責任)の有無が問題になった判決です。過労自殺の事案ですが、長時間労働が原因なので、過労死についても共通する問題を含んでいます。

最高裁の判断

 結論として、最高裁は、会社の不法行為責任(使用者責任)を認めました。また、損害額の決定に当たって、労働者の性格を考慮することができるか?という点についても判断しています。

会社の不法行為責任(使用者責任)

 労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあることは、周知のところである。

 労基法が労働時間規制を規定し、安衛法が作業内容等を限定することなく、事業者に労働者の健康に配慮して労働者の従事する作業を適切に管理するように努めるべきことを規定しているのは、そのような危険を防止することも目的としている。

 したがって、使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う。

 使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の上記注意義務の内容に従って、その権限を行使すべきである。

具体的な義務違反の内容

 被災労働者は、業務を所定の期限までに完了させるべきものとする一般的、包括的な業務上の指揮又は命令の下に当該業務の遂行に当たっていたため、継続的に長時間にわたり残業を行わざるを得ない状態になっていた。会社では、かねて従業員が長時間にわたり残業を行う状況があることが問題とされており、また、従業員の申告に係る残業時間が必ずしも実情に沿うものではないことが認識されていた。

 被災労働者の上司Aは、被災労働者のした残業時間の申告が実情より相当に少ないものであり、被災労働者が業務遂行のために徹夜まですることもある状態にあることを認識しており、上司Bは、被災労働者の健康状態が悪化していることに気付いていたのである。それにもかかわらず、A及びBは、Aの指摘を受けたBが、被災労働者に対し、業務は所定の期限までに遂行すべきことを前提として、帰宅してきちんと睡眠を取り、それで業務が終わらないのであれば翌朝早く出勤して行うようになどと指導したのみで、被災労働者の業務の量等を適切に調整するための措置を採ることはなく、かえって、被災労働者の業務の負担は従前よりも増加することとなった。その結果、被災労働者は、心身共に疲労困ぱいした状態になり、それが誘因となって、うつ病にり患し、うつ病によるうつ状態が深まって、衝動的、突発的に自殺するに至った。

 被災労働者の業務の遂行とそのうつ病り患による自殺との間には相当因果関係があり、上司であるA及びBには、被災労働者が恒常的に著しく長時間にわたり業務に従事していること及びその健康状態が悪化していることを認識しながら、その負担を軽減させるための措置を採らなかったことにつき過失がある。

うつ病にり患したことについて労働者の性格を考慮できるか?

 企業等に雇用される労働者の性格が多様のものであることはいうまでもない。ある業務に従事する特定の労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が業務の過重負担に起因して当該労働者に生じた損害の発生又は拡大に寄与したとしても、そのような事態は使用者として予想すべきものということができる。使用者又はこれに代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う者は、各労働者がその従事すべき業務に適するか否かを判断して、その配置先、遂行すべき業務の内容等を定めるのであり、その際に、各労働者の性格をも考慮することができる。

 したがって、労働者の性格が前記の範囲を外れるものでない場合には、裁判所は、業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求において使用者の賠償すべき額を決定するに当たり、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等を、心因的要因として斟酌することはできない。


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