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労災の損害賠償と元請と下請の責任割合


労災事故に基づく損害賠償において、元請と下請の責任割合について判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁平成3年10月25日判決

 下請労働者の労災事故について、元請に損害賠償責任が認められた事案です。元請と下請の責任割合が問題になりました。

事案の概要

 昭和54年1月29日午後4時12分ころ、A社美山工場の集じんダクト配管工事現場において、クレーン車で鋼管をつり上げて移動中、鋼管が均衡を失して着地し、ワイヤーロープから抜け落ちて倒れ、近くで作業中の作業員の背面に激突して生じた。

 本件事故は、本件車両を運転していたB及び本件車両で鋼管をつり上げるための玉掛け作業を行っていたCの過失に原因するものであるから、B及びCは、それぞれ民法709条による損害賠償責任がある。

 上告人は、A社から請け負った上記集じんダクト配管工事を行うため、被上告人から本件車両を賃借し、また、これを運転していたBを指揮監督するほか、上告人から当該工事を下請けしたD工業の代表者として上記玉掛け作業を行っていたCを指揮監督していた者であるから、本件車両の運行供用者として、かつ、B及びCの使用者として、自賠法3条及び民法715条1項による損害賠償責任がある。D工業は、その代表者であるCが同社の職務を行うについて引き起こした本件事故につき、旧商法261条3項、78条2項、民法44条1項による損害賠償責任がある。

 被上告人は、上告人に本件車両を賃貸し、また、その運転手として従業員のBを派遣していた者であるから、本件車両の運行供用者として、かつ、Bの使用者として、自賠法3条及び民法715条1項による損害賠償責任がある。

最高裁の判断

 最高裁は、 各使用者の責任の割合は、①被用者である加害者の加害行為の態様及び②これと各使用者の事業の執行との関連性の程度、③加害者に対する各使用者の指揮監督の強弱などを考慮して定めるべきと判断しました。

 複数の加害者の共同不法行為につき、各加害者を指揮監督する使用者がそれぞれ損害賠償責任を負う場合においては、一方の加害者の使用者と他方の加害者の使用者との間の責任の内部的な分担の公平を図るため、求償が認められるべきであるが、その求償の前提となる各使用者の責任の割合は、それぞれが指揮監督する各加害者の過失割合に従って定めるべきものであって、一方の加害者の使用者は、当該加害者の過失割合に従って定められる自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、他方の加害者の使用者に対し、当該加害者の過失割合に従って定められる負担部分の限度で、全額を求償することができる。

 なぜなら、使用者は、その指揮監督する被用者と一体をなすものとして、被用者と同じ内容の責任を負うべきところ、この理は、使用者相互間の求償についても妥当するからである。

 一方の加害者を指揮監督する複数の使用者がそれぞれ損害賠償責任を負う場合においても、各使用者間の責任の内部的な分担の公平を図るため、求償が認められるべきであるが、その求償の前提となる各使用者の責任の割合は、被用者である加害者の加害行為の態様及びこれと各使用者の事業の執行との関連性の程度、加害者に対する各使用者の指揮監督の強弱などを考慮して定めるべきものであって、使用者の一方は、当該加害者の上記過失割合に従って定められる負担部分のうち、その責任の割合に従って定められる自己の負担部分を超えて損害を賠償したときは、その超える部分につき、使用者の他方に対して右の責任の割合に従って定められる負担部分の限度で求償することができるものと解するのが相当である。この場合において、使用者は、被用者に求償することも可能であるが、その求償し得る部分の有無・割合は使用者と被用者との間の内部関係によって決せられるべきものであるから、使用者の一方から他方に対する求償に当たって、これを考慮すべきものではない。

 複数の者が同一の事故車両の運行供用者としてそれぞれ自賠法3条による損害賠償責任を負う場合においても、同様に解し得るものであって、当該事故の態様、各運行供用者の事故車両に対する運行支配、運行利益の程度などを考慮して、運行供用者相互間における責任の割合を定めるのが相当である。

 被上告人の上告人に対する請求の当否を判断するに当たっては、まず、BとCとの過失割合に従って両者の負担部分を定め、Cの使用者としての上告人の負担部分を確定し、次いで、Bの加害行為の態様及びこれと上告人及び被上告人の各事業の執行との関連性の程度、Bに対する上告人及び被上告人の指揮監督の強弱、本件車両に対する上告人及び被上告人の運行支配、運行利益の程度などを考慮して、Bの負担部分につき、その使用者及び本件車両の運行供用者としての上告人及び被上告人の負担部分を確定する必要があったものというべきである。


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