脳・心臓疾患の労災認定基準の「異常な出来事」を取上げます。
脳・心臓疾患の労災認定基準
業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、業務上疾病、つまり労災として扱われます(労基法施行規則別表第1の2第8号)。業務による過重負荷があったかどうかは、3つの類型に分け、いずれかに該当すれば、認定要件を満たすこととしています。
異常な出来事
3つの類型のうちの一つが「異常な出来事」です。今回は、その概略を説明します。
出来事の具体例
労災の認定基準は、次の3つを具体的な出来事として挙げています。
異常な出来事の具体例
(1)極度の緊張、興奮、恐怖、驚愕等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的又は予測困難な異常事態→精神的負荷
(2)緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的又は予測困難な異常事態→身体的負荷
(3)急激で著しい作業環境の変化→作業環境の変化
評価期間
発症直前から前日までの間の出来事を評価の対象とします。これは、異常な出来事による負荷を受けると、24時間以内に症状が出現するとされていることが理由です。
過重負荷の有無の判断
異常な出来事と認められるかどうかは、次の観点から客観的かつ総合的に判断するとされています。
異常な出来事の過重負荷の判断の視点
①通常の業務遂行過程において遭遇することがまれな事故又は災害で、その程度が甚大であったか
②気温の上昇、低下等の作業環境の変化が急激で著しいものであったか等
厚労省のパンフレットの具体例
厚労省は、労災の手続きや認定基準に関して、パンフレットを発行しています。パンフレット自体は、認定基準ではありませんが、具体例として挙げられているものは、イメージとして参考にはなります。
精神的負荷
業務に関連した重大な人身事故や、重大な事故に直接関与し、著しい精神的負荷を受けた場合が挙げられています。
身体的負荷
事故の発生に伴い、救助活動や事故処理に携わり、著しい身体的負荷を受けた場合が挙げられています。
作業環境の変化
屋外作業中、極めて暑熱な作業環境下で水分補給が著しく阻害される状態や特に温度差のある場所への頻繁な出入りが挙げられています。
新基準
令和3年9月15日に脳・心臓疾患の労災認定基準が改定されました。
新基準における「異常な出来事」については、以下の記事参照