労災保険は民間の労働者が対象です。公務員の労災である公務災害は労災保険とは別の制度になります。今回は、地方公務員の労災である地公災を取り上げます。
地公災
地方公務員の場合、地方公務員災害補償法(地公災法)に基づき、地方公務員災害補償基金(地公災基金)が公務災害補償の運営を行っています(地公災法3条以下)。
地公災の特徴
地公災に特有のというわけではありませんが、地公災の特徴として、以下のものを挙げることができます。
地公災の特徴
①公務災害だけでなく、通勤災害も補償の対象となる
②地方公共団体の無過失責任
③補償対象は身体的損害に限られる
④迅速な補償の実施のため、定められた基準に従い、定型的な内容で補償給付がなされる
⑤療養補償・介護補償を除いて、損害の全額ではなく一定割合が補填される
地公災の適用対象
常勤の職員は、一般職・特別職を問わず、地公災の対象になります(地公災法2条)。また、一定の常勤的非常勤職員についても地公災の対象とされています(地公災法2条括弧書)。さらに、再任用短時間勤務職員も対象とされています。
非常勤職員については、条例に委ねられています。これは、非常勤職員の勤務実態が多様であることから、一律の災害補償の内容を定めることが困難であるためと説明されています。
地方災の請求手続き
各都道府県ごとに、地公災基金支部が設置されています(地公災法4条)。地公災の補償を受ける場合には、地公災基金支部長宛てに公務災害認定請求書を提出します(地公災法25条2項)。ただし、直接請求するのではなく、任命権者を通じて行うことになっています。
地公災の補償内容
労災保険と同様に次の補償が定められています(地公災25条)。
①療養補償、②休業補償、③傷病補償年金、④障害補償、⑤介護補償、⑥遺族補償、⑦葬祭補償
上記以外に、労災保険の社会復帰促進等事業と同様の福祉事業制度があります(地公災47条)。
特殊公務職員に対する補償特例
警察官や消防職員など生命、身体に高度の危険が予測される特殊公務によって、公務災害を受けた場合、傷病補償年金、障害補償年金、遺族補償年金が40%~50%の範囲で加算されます(地公災46条)。
不服申立て
地公災支部長の決定に不服のある場合は、地公災基金支部審査会に審査請求を行うことができます(地公災51条2項)。支部審査会の決定に不服のある場合は、地公災基金審査会に再審査請求することができます(地公災51条2項)。
支部審査会の決定に不服がある場合又は審査会の決定に不服がある場合は、地公災基金を被告として、地公災基金本部又は支部の所在地を管轄する地方裁判所に取消訴訟を提起することになります。