労災事故の典型である介護職の動作の反動・無理な動作を取上げます。
- 1. 利用者の移乗介助で腰を痛めた…
- 2. 介護職に特有の動作の反動・無理な動作
- 2.1. 介護職における動作の反動・無理な動作の要因
- 2.1.1. 介護職における動作の反動・無理な動作の要因
- 2.2. 他業種との違い
- 2.2.1. ①対象が人である
- 2.2.2. ②無理な動作の強要
- 3. 動作の反動・無理な動作の労災認定のポイント
- 3.1. ①災害性腰痛
- 3.1.1. 労災となるケース
- 4. 介護職における動作の反動・無理な動作のよくある誤解
- 5. 介護職における動作の反動・無理な動作のチェックリスト
- 5.1.1. 利用者の介助中に腰を痛めた
- 5.1.2. 会社に報告
- 5.1.3. 病院を受診
- 5.1.4. 労災請求
- 6. 介護職における動作の反動・無理な動作の事例
- 6.1. ①夜勤介助中に腰を痛めた
- 6.2. ②車椅子移動時に腰痛
- 7. 介護職における動作の反動・無理な動作でケガをされた方へ
利用者の移乗介助で腰を痛めた…

移乗介助の際に腰がギクッてしたんだけど、休んじゃダメだって思っちゃって…

介護の仕事って、人を支える責任感が強い人ほど、自分の体を後回しにしちゃうんだよね。

でも自己管理不足って思われるのも怖くて…

それは、誤解だよ。「動作の反動・無理な動作」による腰痛は、労災として認められるんだ。
介護職に特有の動作の反動・無理な動作
動作の反動・無理な動作の労災事故は、重い荷物を持ち上げたり、不自然な姿勢で作業した際の「反動」や「無理な動作」で生じる事故類型です。
厚労省が発表した「令和6年度の労働災害の発生状況の分析等の概要」によると、動作の反動・無理な動作の死傷者数は、22,218人でした。その内、介護施設を含む社会福祉施設における動作の反動・無理な動作の死傷者数は、4,802人でした。
介護職における動作の反動・無理な動作の要因
介護職における動作の反動・無理な動作は、利用者が急に動いた、よろけた、体重を預けてきた、といった不意の反動が要因になっていることが特徴です。
介護職における動作の反動・無理な動作の要因
①移乗介助(ベッドから車椅子、トイレなど)
②入浴介助(不安定な体勢での抱え上げ)
③体位変換(寝返り)
④排泄介助
他業種との違い
製造業・陸上貨物運送業における動作の反動・無理な動作との違いは、以下のとおりです。
①対象が人である
製造業や陸上貨物運送業で扱う物・荷物の重さや形状は一定しています。また、機械の動作も予測可能です。一方、介護職が扱うのは人です。利用者の体格・体重は様々です。さらに、認知症の方など、予測不能な動きや抵抗がある場合もあります。
②無理な動作の強要
介護職は、人手不足や緊急対応が必要となる職種です。「今すぐ」助けなければならない状況で、腰痛ベルトや補助具(リフトなど)を使う余裕がなかったり、そもそも設備がない施設もあります。
動作の反動・無理な動作の労災認定のポイント
動作の反動・無理な動作によるケガは、腰痛が多いです。労災は、業務上腰痛を①災害性腰痛と②非災害性腰痛に分けています。それぞれ、労災の認定基準を定めています。

動作の反動・無理な動作による腰痛は、基本的に①災害性腰痛です。
①災害性腰痛
災害性腰痛は、転倒など腰の負傷を原因とする場合が典型です。重量物の取扱い作業中に不自然な姿勢をとったことが原因の場合などが災害性腰痛として扱われます。
介護職の場合は、利用者の移乗介助中等に不自然な姿勢を取ったことが原因の場合、災害性腰痛として扱われます。
労災となるケース
利用者の体を支えた際の腰部捻挫
体位変換・移乗介助時に腰を痛めた
ベッドから車椅子への移動介助中に腰を痛めた

災害性腰痛の労災認定基準は、以下の「災害性腰痛の労災認定」を参照
労災認定に際しては、勤務シフト表・業務日報・同僚の報告書などが証拠となります。
介護職における動作の反動・無理な動作のよくある誤解
| よくある誤解 | 正しい理解 |
| 自分の不注意だから労災じゃない | 労働者に不注意があっても労災になる |
| 腰痛は労災にならない | 利用者の介助中に不自然な姿勢をとったことが原因なら労災 |
| 腰痛の持病があったから労災にならない | 利用者の介助中に不自然な姿勢をとったことが原因で腰痛が悪化した場合は悪化した範囲で労災になる |
| 誰も見てないから労災にならない | 腰痛を発症した状況を詳細に記録することで労災と認められる可能性あり |
介護職における動作の反動・無理な動作のチェックリスト
介護職における動作の反動・無理な動作による事故に遭った際の行動チェックリストです。参考にしてみてください。
利用者の介助中に腰を痛めた
発生日時、動作、体勢、業務内容を記録
会社に報告
施設長、上司、同僚等に報告
病院を受診
病院で仕事中の事故であることを伝える
労災請求
労災保険の請求をする
会社が手続きしてくれない、非協力的な場合は弁護士に相談する
介護職における動作の反動・無理な動作の事例
介護職における動作の反動・無理な動作の事例を紹介します。
①夜勤介助中に腰を痛めた
介護施設の夜勤中に利用者の急な体動で姿勢を崩し、腰部捻挫。当初は「自分のせい」と思って報告を遅らせたが、後日、弁護士に相談して労災申請した。その結果、労災と認定された。
②車椅子移動時に腰痛
デイサービスの送迎時の車椅子移動時に腰痛を発症した。当初は、「立ちっぱなしで疲労してただけ」と思い込んでいたが、同僚の勧めで弁護士に相談して労災申請した。その結果、労災と認定された。
介護職における動作の反動・無理な動作でケガをされた方へ
介護の仕事は社会に不可欠ですが、あなたが体を壊してまで我慢する必要はありません。「動作の反動・無理な動作」による腰痛は、あなたのせいではなく、労働環境(業務)が原因の可能性があります。
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