厚労省から令和2年度の精神障害の労災補償状況が公表されています。その概要を取上げます。
令和2年度 精神障害の労災補償状況
令和2年度は、2,051件の請求があり、1,906件について決定がなされました。労災と認定されたのは608件で、認定率は31.9%でした。
過労自殺の請求件数は155件で、179件について決定がなされました。労災と認定されたのは81件で、認定率は45.3%でした。
業務種別労災請求件数
精神障害の労災保険の請求件数が多かった業種の上位5つは、以下のとおりです。
①医療・福祉:488件(内過労自殺12件)
②製造業:326件(内過労自殺1件)
③卸売業・小売業:282件(内過労自殺23件)
④運輸業・郵便業:202件(内過労自殺11件)
⑤宿泊業・飲食サービス業:92件(内過労自殺12件)
業種別労災認定件数
精神障害で労災と認定された件数の多い業種の上位5つは、以下のとおりです。
①医療・福祉:148件(内過労自殺5件)
②製造業:100件(内過労自殺27件)
③卸売業・小売業:63件(内過労自殺8件)
③運輸業・郵便業:63件(内過労自殺5件)
⑤建設業:43件(内過労自殺14件)
請求件数で5位の宿泊業・飲食サービス業は,6位・39件でした。
業種別労災認定件数②
精神障害で労災と認定された件数の多い業種をさらに細かくみると、以下のとおりです。
①医療・福祉の社会保険・社会福祉・介護事業:79件(過労自殺0件)
②医療・福祉の医療業:69件(内過労自殺5件)
③運輸業・郵便業の道路貨物運送業:32件(内過労自殺3件)
④建設業の総合工事業:27件(内過労自殺9件)
⑤宿泊業・飲食サービス業の飲食店:23件(内過労自殺3件)
職種別労災認定件数
精神障害で労災と認定された件数の多い職種の上位5つは、以下のとおりです。
①事務従事者の一般事務従事者:57件(内過労自殺5件)
②専門的・技術的職業従事者の保健師・助産師・看護師:45件(内過労自殺1件)
③サービス職業従事者の介護サービス職業従事者:37件(過労自殺0件)
④販売従事者の営業職業従事者:35件(内過労自殺4件)
⑤輸送・機械運転従事者の自動車運転従事者:34件(内過労自殺3件)
年齢別労災認定件数
精神障害で労災と認定された人を年齢別でみると、40代の174件が最も多くなっています。次いで30代の169件・20代の132件・50代の103件と続きます。
脳・心臓疾患と比べると、20代や30代の若い世代が、精神障害で労災認定されていることがわかります。
時間外労働時間別労災認定件数
精神障害で労災と認定された人を1か月平均の時間外労働時間別でみると、以下のとおりです。
①20時間未満:68件(内過労自殺3件)
②100時間以上120時間未満:56件(内過労自殺10件)
③40時間以上60時間未満:45件(内過労自殺11件)
④20時間以上40時間未満:40件(内過労自殺7件)
⑤160時間以上:30件(内過労自殺6件)
60時間未満の時間外労働で労災と認定されたのが1件もない脳・心臓疾患と比べると、精神障害は、時間外労働以外の要因で労災と認定されていることがわかります。
精神障害の出来事別労災認定件数
精神障害の労災認定基準の具体的出来事の中で労災と認定された件数の多い上位5つは、以下のとおりです。
①パワハラ:99件(内過労自殺10件)
②悲惨な事故や災害の体験・目撃:83件(内過労自殺1件)
③同僚等から暴行・いじめ・嫌がらせ:71件(内過労自殺2件)
④仕事内容・仕事量の大きな変化:58件(内過労自殺21件)
⑤特別な出来事:54件(内過労自殺6件)
さらに、6位にセクハラの44件が続きます。統計を見ると、精神障害の労災認定は、職場の人間関係が要因となっているケースが多いということがわかります。