石綿救済法の特別遺族給付金の概要を取上げます。
石綿救済法
アスベストによる健康被害が社会問題になったことを受け、2006年に、石綿による健康被害の救済に関する法律(石綿救済法)が制定されました。
石綿救済法は、労災保険で救済されないアスベストの健康被害の救済のため、様々な給付について規定しています。今回は、その内の特別遺族給付金を取上げます。
特別遺族給付金
労働者がアスベストを取扱う業務により中皮腫等にり患し死亡した場合、労災保険の遺族補償給付の対象になります。
特別遺族給付金は、労働者がアスベストを取扱う業務により中皮腫等で死亡したにもかかわらず、時効により労災保険給付を受けれなくなった遺族に支給されます(石綿救済法59条以下)。
労災保険の時効については、以下の記事参照
給付内容
特別遺族支給金は、①特別遺族年金又は②特別遺族一時金です。②特別遺族一時金は、①特別遺族年金を受給できる遺族がいない場合に支給されます。
特別遺族年金の支給要件
労災保険の遺族補償年金と同様、以下の要件をすべて満たす必要があります。
特別遺族年金の支給要件
(1)被災労働者が死亡した当時、その収入によって生計を維持していた→①生計維持関係
(2)被災労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹であること→②受給資格・受給権者
(3)(2)の妻以外は年齢要件を満たしていること→③年齢要件
②受給資格・受給権者
受給資格者が複数いる場合は、①配偶者→②子→③父母→④孫→⑤祖父母→⑥兄弟姉妹の順になります。
第1順位の受給資格者がいる場合は、第2順位以下の受給資格者は、受給権者になりません。
③年齢要件
妻以外の受給資格者には、年齢要件があります。
夫、父母、祖父母は55歳以上であることが必要です。
子、孫は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までであることが必要です。
兄弟姉妹は、18歳に達する日以後の最初の3月31日まであること又は55歳以上のどちらかが必要です。
ただし、一定の障害がある場合は、上記の年齢要件は課されません。
特別遺族一時金の支給要件
特別遺族一時金の受給権者は、以下の内、最上位の受給資格者です。
特別遺族一時金の受給資格者
①配偶者
②被災労働者が死亡した当時、その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
③子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹
②と③の中の順位は、子→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹の順です。
請求期限
特別遺族支給金の請求は、令和14年3月27日までです。令和4年6月の石綿救済法の改正で期限が延長されました。
支給対象
石綿救済法の改正により、令和8年3月26日までに亡くなった遺族に支給対象が拡大されました。
前述のとおり、労災保険の遺族補償給付が時効にかかった場合に初めて特別遺族給付金が請求できます。なお、遺族補償給付の時効期間は5年です。