労災保険の特別加入制度は、どのような制度ですか?
労災保険の対象は労働者
労働災害が発生した場合に、労災保険から保険給付を受けることができるのは、労働者のみです(労災保険法1条)。したがって、事業主・自営業者・家族従業者などの労働者に該当しない人は、労災保険の対象にはなりません。
労災の特別加入制度
労災保険の対象は労働者のみですが、労災保険法には特別加入制度があります(労災保険法33条)。一人親方や中小企業の事業主など労働者に該当しない人のうち、業務内容・危険の程度によって、労働者に準じて保護することがふさわしい人について、一定の要件の下で労災保険に特別に加入することを認めています。
特別加入制度の対象者
特別加入制度を利用できるのは、次の4種類の人です。
特別加入の対象者
①中小企業の事業主・家族従事者等
②一人親方、その他の自営業者
③海外派遣者
④特定作業従事者
特定作業従事者には、農業関係従事者や介護作業従事者などが当たります。
特別加入制度の加入手続き
労働者の労災保険は強制加入で、労働者が手続きをする必要はありません。また、使用者が労災保険料を支払ってなくても、労災保険から給付を受けることができます。
しかし、特別加入制度は、特別加入制度を利用する人が加入手続きを取らなければ、労災保険から給付を受けることはできません(労災保険法34条1項等)。加入手続きは、加入者対象者ごとに取扱窓口があり、取扱窓口を通じて、特別加入申請書を労基署に提出します。
特別加入の労災保険の給付内容
特別加入の場合も、通常の労災保険と同様の給付を受けることができます。ただし、労災保険給付の算定の基礎となる給付基礎日額は、加入申請の際に加入者自身が選択して申請し、労働局長が承認した額になります(給付基礎日額も参照)。ちなみに、給付基礎日額は3,500円~2万5,000円までの16段階で設定されています(労災保険規則46条の20)。
特別加入していても労働者性が認められることがある
建設業の一人親方など労災保険の特別加入制度を利用していても、複数の事業主との間で、それぞれ契約を締結し業務に従事することがあります。労働災害が生じた際の契約の具体的内容、就労実態等から労働者性が認められることがあります。
労働者性が認められる場合は、特別加入ではなく、通常の労災保険の給付対象になります。労働者性が認められ、基礎給付日額が通常の労災保険の方が高い場合は、通常の労災保険の給付請求を行うべきでしょう(海外赴任者の労災も参照)。