厚労省から公表された令和3年度の精神障害の労災補償状況の概要を紹介します。
令和3年度の精神障害の労災補償状況
令和3年度の精神障害の労災の請求件数は、2,346件でした。令和2年度は2,051件だったので、請求件数は増加しています。労災かどうか?の決定が行われたのは、1,953件で、労災と認定されたのは、629件でした。労災の認定率は、32.2%でした。
精神障害の内、過労自殺の請求件数は、171件でした。令和2年度の155件から増加しています。労災かどうか?の決定が行われたのは、167件で、労災と認定されたのは、79件でした。労災の認定率は、47.3%でした。
ちなみに、複数業務要因災害は、0件でした(請求件数は不明)。
業種別の精神障害の労災請求件数
業種別の精神障害の労災請求の件数の多い上位5つは、以下のとおりです。
業種 | 請求件数 |
医療・福祉 | 577件(内、過労自殺13件) |
製造業 | 352件(内、過労自殺46件) |
卸売業・小売業 | 304件(内、過労自殺21件) |
運輸業・郵便業 | 179件(内、過労自殺12件) |
建設業 | 122件(内、過労自殺28件) |
業種別の精神障害の労災認定件数
精神障害が労災と認定された件数の多い業種の上位5つは、以下のとおりです。
業種 | 労災認定件数 |
医療・福祉 | 142件(内、過労自殺0件) |
製造業 | 106件(内、過労自殺22件) |
卸売業・小売業 | 76件(内、過労自殺11件) |
運輸業・郵便業 | 67件(内、過労自殺8件) |
宿泊業・飲食サービス業 | 39件(内、過労自殺4件) |
請求件数5位の建設業は、37件(内、過労自殺11件)で6位でした。
業種別の精神障害の労災認定件数②
精神障害で労災と認定された業種をさらに分類すると、上位5つは、以下のとおりです。
①医療・福祉の社会保険・社会福祉・介護事業:82件
②医療・福祉の医療業:59件
③運輸業・郵便業の道路貨物運送業:47件(内、過労自殺6件)
④宿泊業・飲食サービス業の飲食店:29件(内、過労自殺2件)
⑤建設業の総合工事業:22件(内、過労自殺8件)
なお、他に分類されないものの、その他の事業サービス業が22件(内、過労自殺4件)で5位となっています。
職種別の精神障害の労災認定件数
精神障害で労災と認定された件数の多い職種の上位5つは、以下のとおりです。
①事務従事者の一般事務従事者:67件(内、過労自殺5件)
②サービス職業従事者の介護サービス職業従事者:47件
③販売従事者の営業職業従事者:44件(内、過労自殺13件)
④輸送・機械運転従事者の自動車運転従事者:41件(内、過労自殺3件)
⑤専門的・技術的職業従事者の保健師・助産師・看護師:36件
年齢別の精神障害の労災認定件数
年齢別の精神障害の労災認定件数は、40代が200件(内、過労自殺30件)で最多です。以下、20代の153件(内、過労自殺16件)、30代の145件(内、過労自殺17件)と続きます。
比較的若い年代が、精神障害で労災と認定されていることがわかります。
時間外労働別の精神障害の労災認定件数
1か月平均の時間外労働時間別の精神障害の労災認定件数を見ると、20時間未満が最多となっています。
①20時間未満:73件(内、過労自殺8件)
②80時間以上100時間未満:44件(内、過労自殺14件)
③100時間以上120時間未満:41件(内、過労自殺7件)
④60時間以上80時間未満:38件(内、過労自殺8件)
⑤160時間以上:35件(内、過労自殺6件)
精神障害の出来事別の労災認定件数
精神障害の労災認定基準の具体的出来事別の労災認定件数の上位5つは、以下のとおりです。
①パワハラ:125件(内、過労自殺12件)
②仕事内容・仕事量の大きな変化:71件(内、過労自殺20件)
③悲惨な事故や災害の体験・目撃:66件(内、過労自殺1件)
④特別な出来事:63件(内、過労自殺9件)
⑤同僚等から暴行・いじめ・嫌がらせ:61件(内、過労自殺1件)
6位にセクハラの60件と続きます。精神障害の労災認定は、職場の人間関係が起因している事案が多いことがわかります。