労災の業務上疾病の内、歯牙酸蝕の労災認定を取上げます。
職業病としての歯牙酸蝕
塩化水素、硝酸又は硫酸のガス・蒸気への長期低濃度ばく露により、歯牙酸蝕が生じることがあります。
歯牙酸蝕は、職業病として古くから知られている疾病の1つです。歯牙酸蝕の労災認定については、以下の通達があります。
歯牙酸蝕の業務上疾病としての認定基準
歯牙酸蝕の内、診断により治療を要すると認められたものが、労基法施行規則別表第1の2第4号又は9号の業務上疾病として、労災と認定されます。
「治療を要する」程度として、歯牙の磨滅消耗により、象牙質が露出するに至ったものとするのが、認定基準です。
歯牙酸蝕の程度
歯牙酸蝕は、酸のヒュームが直接作用しやすい前歯、特に下顎歯に多く、侵蝕の程度は、以下の4段階に分類されます。
歯牙酸蝕の侵蝕の程度
第一度:歯牙琺瑯質の表面が不透明となる、又は軽い着色混濁を示しているが、未だ実質の欠損を伴わないもの
第二度:すでに歯牙切端・唇面膨隆部に実質欠損が始まり、歯質消耗により切端が薄くなったもの
第三度:歯牙の脱灰軟化が進行し歯質の磨滅消耗により切端が鋸歯状又は鈍円臼状を呈し、象牙質が露出しているが、未だ疼痛のないもの
第四度:第三度の症状がさらに強度になり、物理的刺激、化学的刺激に鋭敏となり疼痛を訴えるもの
認定基準は、第三度以上の歯牙酸蝕を労災の業務上疾病として取扱うとするものです。
労災の認定
歯牙酸蝕の労災認定に際しては、業務以外の原因によるものでないかどうか?を調査する必要があります。そのため、以下の事項から業務に起因しないう蝕症等との鑑別を慎重に行う必要があります。
歯牙酸蝕の労災認定に際しての調査事項
酸蝕が疑われる歯の部位、他の歯との関係
酸の気中濃度
既往症
嗜好