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患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患の労災認定


労災の業務上疾病の内、患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患の労災認定を取上げます。

患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患

 医療機関等の病原体にさらされる作業環境下において業務に従事することにより発生する伝染性疾患は、業務上疾病として例示列挙されています(労基法施行規則別表1の2第6号の1)。

患者の診療若しくは看護の業務

 病院・診療所において医師の行う患者の診断・検査・治療又は看護婦等の行う看護業務のことです。

介護の業務

 身体上又は精神上の障害により日常生活を営むのに支障がある者に対し、入浴・排せつ・食事等の介護、機能訓練及び療養上の管理その他のその者の能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするためのサービスを行う業務のことです。

研究その他の目的で病原体を取り扱う業務

 以下の2つの業務が該当します。

研究その他の目的で病原体を取り扱う業務

①病院・診療所において診療放射線技師・診療X線技師・臨床検査技師・衛生検査技師等の行う「患者の診療若しくは看護の業務」以外の業務で、細菌・ウイルス等の病原体によって汚染のおそれのある業務

②病院・診療所以外の衛生試験所・医学研究所・保健所等において医師・研究者又はこれらの助手等の行う研究・検査及びこれらの業務に付随する業務で病原体によって汚染のおそれのある業務

伝染性疾患

 労基法施行規則は、疾病を具体的に規定していません。医療機関等の病原体にさらされる作業環境下の業務によって、感染するおそれのある伝染疾患を網羅的に規定するものです。

 伝染性疾患として、以下の疾患が想定されます。

想定される伝染性疾患

コレラ、赤痢、腸チフス、発疹チフス、結核、ウイルス性肝炎、新型コロナウイルス感染症等

労災の認定

 伝染疾患は、患者の診療・看護、介護、研究やその他の目的で病原体を取扱う労働者にとって、り患の危険が比較的高い疾病です。しかし、伝染疾患は、特定の地域、職業又は性別を限定して発症するものではありません。感染源があれば、一般社会人が、あらゆる機会に広く感染する危険を持つものです。

 したがって、病原体により感染のおそれのある業務に従事していたからといって、必ずしも発病した疾病が、当該業務に従事していたためにり患したと断定できません。

 とはいえ、患者の診療・看護、介護、研究やその他の目的で病原体を取扱う業務は、他の業務と比較して、病原体が存在することが明白で、かつ、直接又は間接に接触する機会が当然にある場合は、同種の病原体によって発症した伝染疾患については、一般的には業務以外の原因でり患したとの反証がない限り、労災と認定されます。

 労災の認定に際しては、一般的認定要件と医学的診断要件を充足することが必要です。

一般的認定要件

 一般的認定要件は、以下の5つです。

一般的認定要件

①当該疾病の内容から病原体の汚染を受けることが明らかに認められること

②当該疾病に特有の症状を示していること

③病原体に感染したと推定される時期から発病までの時間的間隔が、医学上、業務との因果関係の存在を認め得ること

④発生した伝染疾患の病原体の種類が、業務上で取扱い・接触した病原体の種類と一致すること

⑤業務以外の原因によるものではないこと

 ③は、伝染疾患の潜伏期間と一致するかどうか?という問題です。

 ⑤は、家族に感染者がいるか?居住者・勤務地区における伝染疾患の流行の有無等の状況から、業務以外の他の原因により感染したかどうか?という問題です。

医学的診断要件

 医学的診断要件として以下の4つの調査が必要です。

医学的診断要件

①伝染疾患にり患するおそれのある業務に従事した期間とその態様

②業務と感染症との因果関係

③臨床検査項目

 ⑴血液検査等の臨床的検査

 ⑵病原体抗原・抗体の検出

 ⑶免疫反応検査

④他の疾病との鑑別診断

 ②の因果関係は、感染源、感染経路、侵入門戸、感染部位、感染から発症までの潜伏期間等から判断します。


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