労災保険の各種給付の基礎となる給付基礎日額を取り上げます。
給付基礎日額は、労災の各種保険給付の基礎となる
給付基礎日額は、休業補償給付・障害補償給付・遺族補償給付などの各種給付の支給額の基準となります。
療養補償給付や葬祭料を除いては、労災保険の給付は、給付基礎日額の何日分又は何%という算定をします。そのため、基礎給付日額の算定は重要になってきます。
平均賃金を基に算出する
給付基礎日額は、算定すべき事由の発生した日の直前3か月間の総賃金を日割計算した平均賃金が原則です(労災保険法8条1項、労基法12条1項)。賃金には、一部除外されるものもありますが、労働の対価として使用者から支払われたものはすべて算入されます。
雇用契約締結後、3か月を経過していない場合は、雇用契約締結後の賃金総額を雇用契約後の総日数で割った金額が平均賃金になります(労基法12条6項)。
詳しくは、以下の記事参照
特例
給付基礎日額を平均賃金によることが相当でないときは、政府が算定する額を給付基礎日額とするという規定があります(労災保険法8条2項)。
平均賃金の算定期間中に業務外の傷病のために休業した期間がある場合(労災保険規則9条1項1号)や、じん肺患者の場合(労災保険規則9条1項2号)などに適用されます。
最低保障制度
賃金が日給・時間給・出来高給の場合,賃金総額÷実労働日数×60%が最低保障額になります(労基法12条1項・但書1号)。さらに、給付基礎日額は、最低保障額が定められています(労災保険規則9条4号)。
また、日雇労働者の場合の計算特例(労基法12条7項)や年齢階層別の最低・最高限度額(労災保険法8条の2第2項以下)についても規定があります。
未払い残業代の扱い
平均賃金の算定に当たっては、残業代である時間外労働の割増賃金を含みます。平均賃金を算定する際に、賃金として確定していれば、実際に支払われたかどうかは関係ありません。
未払い残業代がある場合は、給付基礎日額に含めることになります。未払い残業代がある場合、使用者の賃金台帳等には、記載されていないことがあり、労基署の調査で見逃されることがあります。
労災の支給決定があっても、給付基礎日額が低い場合は、審査請求をすることができます。未払い残業代がある場合は、労災保険請求の際に、労基署にそのことを伝えておくといいかもしれません。