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労災の認定と治療機会の喪失


業務と関係なく病気になった後、仕事が忙しすぎて病院に行けず、病気が悪化した場合、労災と認定されるのでしょうか?

治療機会の喪失とは?

 疾病の発症自体は、業務起因性、つまり、業務との因果関係が認められなくても、発症後も業務に従事せざるをえず、適切な治療を受けることができなかった結果、死亡又は重篤な傷病結果が生じることがあります。

 上記のような場合、発症・その結果と業務との因果関係が認められるかという問題があります。この問題を「治療機会の喪失」といいます。労災の認定基準は、治療機会の喪失について何ら触れられておらず、行政段階では、労災と認めていません。

従来の裁判例

 従来の裁判例は、海上であったり、遠隔地などの地理的、物理的な事情で治療を受けられなかった場合に、業務との因果関係、業務起因性を認めてきました。

 近時、治療機会の喪失は、脳・心臓疾患に関して、疾病自体は私傷病であるが、発症後の業務の継続による治療機会の喪失を理由として業務起因性が認められるか?が争われています。

最高裁平成8年1月23日判決・3月5日判決

 公務員の労災である公務災害について、最高裁判決があります。

 最高裁は、脳・心臓疾患の発症後も公務に従事せざるを得なかったために治療機会を喪失した場合、公務に内在する危険が現実化したものとして、発症と公務との間に相当因果関係が認められると判断しています。

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各最高裁判決の詳細は、各記事参照

治療機会の喪失に関する最高裁判決(労災の判例)

労災の認定に関し、治療機会の喪失が問題となった最高裁判決を紹介します。

治療機会の喪失に関する最高裁判決②(労災の判例)

労災の認定に関し、治療機会の喪失が争点になった最高裁判決を紹介します。

 下級審において、民間の労災についても、治療機会の喪失を認める裁判例があります。

治療機会の喪失のまとめ

 最高裁を前提とすると、業務自体の過重性が認められなくても、疾病を発症し治療が必要であるにもかかわらず業務を継続しなければならず、治療を受けることができないことにより、重い疾病を発症又は症状の憎悪があったと認められる場合は、発症又は憎悪と業務との間の因果関係が認められます。

 しかし、治療機会の喪失については、残念ながら、行政段階では認められません。したがって、裁判を視野に入れて、検討・準備していくことが必要になります。


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