仕事中の暑さや作業環境が原因で熱中症になった場合は、労災と認められる可能性があります。
屋外での建設作業だけでなく、高温の工場や倉庫、空調の効かない店舗、長時間の外回りなどで発症した熱中症も対象になり得ます。
また、症状が勤務中ではなく、帰宅途中や帰宅後に悪化した場合でも、日中の業務が原因であれば業務災害として認められる可能性があります。
まずは作業を中止して医療機関を受診し、医師に「仕事中の暑い環境で体調を崩したこと」を伝えてください。あわせて、当日の気温や作業内容、休憩時間、服装などを記録しておくことが重要です。
- 1. 仕事中の熱中症は労災になる
- 2. 仕事中に熱中症になったら、まず何をすればいい?
- 3. 熱中症が労災と認められる4つのポイント
- 3.1. ①どのような環境で、どのような仕事をしていたか?
- 3.2. ②仕事と症状の発生に時間的なつながりがあるか?
- 3.3. ③医師から熱中症と診断されているか?
- 3.4. ④仕事以外の原因だけで発症したものではないか?
- 4. 熱中症が労災と認められやすい仕事・状況
- 5. 帰宅途中・帰宅後に症状が出た場合
- 6. 労災請求のために残しておきたい証拠
- 7. 会社が労災と認めない場合
- 8. 労災保険から受けられる補償
- 9. 会社に損害賠償請求できる場合
- 10. 仕事中に熱中症になった方へ
仕事中の熱中症は労災になる

真夏に外回りしてたらフラフラして倒れちゃった…これって会社に言ってもいいのかな?

熱中症かな?
熱中症も条件を満たせば労災になるんだよ。
「暑熱な場所における業務による熱中症」が、業務上疾病として例示列挙されています(労基法施行規則別表第1の2第2号の8)。仕事中、通勤途中に熱中症になった場合、労災と認定される可能性があります。
仕事中に熱中症になったら、まず何をすればいい?
仕事中に、熱中症になった場合、まず何をすればいいのでしょか?2025年6月1日から職場における熱中症対策が義務化されています。各職場で、現場の実態に即した具体的な対応を定めているはずです。したがって、その対応に即して行動することが求められます。

職場における熱中症対策の義務化については、以下の記事参照
2025年6月1日施行!職場における熱中症対策の義務化
2025年6月1日から職場における熱中症対策が義務化されました。具体的にどんな対策をすればいいのか?を解説します。
職場において、具体的な対応が定められていない場合は、以下のように対処することになるでしょう。
熱中症が労災と認められる4つのポイント
労災の内、業務災害と認定されるには、①業務遂行性があることを前提に、②業務起因性があることが必要です。
熱中症も①業務遂行性があり、②業務起因性があると認められれば、労災と認定されます。熱中症の場合は、一般的認定要件と医学的診断要件を満たすと、労災と認定されます。

詳しくは、以下の「熱中症の労災認定基準」を参照
以下、熱中症が労災と認められるためのポイントを解説します。
①どのような環境で、どのような仕事をしていたか?
どのような環境で、どのような仕事をしていた時に熱中症になったのか?が重要です。以下のような事情を押さえておく必要があります。
- 作業場所の気温・湿度・WBGT値
- 直射日光や照り返し、炉や機械からの放射熱
- 風通しや空調の状況
- 作業内容と身体的な負荷
- 作業時間と連続作業時間
- ヘルメット、防護服、マスクなどの服装
- 休憩、水分・塩分補給の状況
- 暑さに身体が慣れていたか
②仕事と症状の発生に時間的なつながりがあるか?
仕事中に、めまいや吐き気などの熱中症の症状が出た場合だけでなく、勤務終了後や帰宅途中に症状が悪化した場合もあります。
以下のような事実を時系列で整理することが重要です。
- 何時ごろから体調がおかしくなったか
- 誰に何と伝えたか
- いつ医療機関を受診したか
③医師から熱中症と診断されているか?
熱中症の労災認定では、作業環境だけでなく、症状や体温、検査結果などから医学的に熱中症と診断できるかも確認されます。
受診時には、単に「体調が悪い」と伝えるのではなく、暑い環境での作業内容や作業時間、症状が出た時刻を具体的に伝えてください。
④仕事以外の原因だけで発症したものではないか?
熱中症の発症が仕事以外の原因ではないことが必要です。たとえば、プライベートで長時間の炎天下の運動をした直後や自宅が高温環境だった等仕事以外の原因で、熱中症を発症したと認められる場合は、労災と認められません。
また、睡眠不足、飲酒、体調不良、基礎疾患なども確認されることがあります。
もっとも、睡眠不足等の場合、問題になるのは、これらの事情だけで熱中症を発症したといえるのか、それとも仕事中の暑熱環境や作業負荷が発症に影響したのかという点です。
熱中症が労災と認められやすい仕事・状況
以下のようなケースは、熱中症が労災と認められやすいです。
熱中症が労災と認められやすいケース
①建設現場や道路工事での屋外作業
②工場、倉庫、厨房、クリーニング工場など高温の屋内作業
③警備、交通誘導、配送、引越し作業
④営業や訪問介護など長時間屋外を移動する仕事
⑤空調の効かない店舗、バックヤード、事務所での作業
⑥防護服、マスク、ヘルメットなどを長時間着用する作業
⑦急に暑くなった時期や、暑さに慣れていない状態での作業
⑧休憩や水分補給を十分に取れない作業
帰宅途中・帰宅後に症状が出た場合
仕事を終え、帰宅途中に熱中症になった場合、通常は、通勤災害として労災と認められるケースです。しかし、熱中症の症状が帰宅途中に出たからといって、必ず通勤災害になるわけではありません。
日中の業務による暑さや作業負荷が原因で、帰宅途中や帰宅後に症状が悪化した場合は、業務災害として認められる可能性があります。
つまり、症状が現れた場所だけではなく、発症の原因と経過を踏まえて判断されます。
労災請求のために残しておきたい証拠
仕事中に熱中症になった場合、労災の請求をする際には、以下のような証拠があるのが望ましいです。
- 作業場所・服装・設備の写真
- 当日の気温、湿度、WBGT値
- タイムカードや勤務表
- 作業内容、作業時間、休憩時間
- 水分・塩分補給の状況
- 上司や同僚に体調不良を伝えたメール・LINE
- 救急搬送記録、診療録、診断書
- 帰宅後の症状の経過を記したメモ
メールやLINEは、後で消えてしまう可能性があります。症状の経過は、後から思い出すのは難しい場合があります。早期に証拠として確保しておくことが望ましいです。
会社が労災と認めない場合
会社によっては、労災であることを認めなかったり、何かと理由をつけて労災の手続きをしないことがあります。
しかし、労災かどうかを最終的に決めるのは会社ではなく、労働基準監督署長です。会社が労災を認めなかったり、請求書の事業主証明を拒んだりしても、労働者本人から労災請求できます。
労災保険から受けられる補償
熱中症が労災と認められた場合、労災保険から以下のような給付を受けることができます。

通勤災害の場合もほぼ同じ内容の給付を受けられます。
会社に損害賠償請求できる場合
- 会社が休憩を取らせなかった
- 会社が水分補給を制限した
- 体調不良を訴えたのにもかかわらず、会社が作業を続けさせた
- 会社が必要な報告・搬送体制を整えていなかった
上記のように、仕事中の熱中症の発症に、会社に安全配慮義務違反がある場合は、労災保険とは別に、会社に損害賠償請求できる可能性があります。

詳しくは、以下の「熱中症の安全配慮義務」を参照
熱中症で会社に損害賠償請求できる?安全配慮義務違反・証拠・労災保険との関係
仕事中の熱中症について、会社に損害賠償請求できる場合があります。労災認定と会社の責任の違い、安全配慮義務違反を判断するポイント、WBGT・休憩・水分補給・暑熱順化・発症後の対応、必要な証拠、労災保険との関係を解説します。
仕事中に熱中症になった方へ
次のような場合は、早めに弁護士へご相談ください。
- 会社から「自己管理の問題だから労災ではない」と言われた
- 会社が労災の書類を書いてくれない
- 帰宅途中や帰宅後に症状が悪化した
- 熱中症が重症化して長期間仕事を休んでいる
- 熱中症で家族が亡くなった
- 休憩や水分補給を認めないなど、会社の熱中症対策に問題があった
熱中症の労災認定では、当日の暑さだけでなく、作業内容、服装、休憩状況、症状が出た経過などを整理する必要があります。
法律事務所エソラでは、仕事中の熱中症が労災に当たるか、会社への損害賠償請求が可能かを個別の事情に応じて検討します。労災の初回相談は無料です。

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