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精神障害の労災認定における心理的負荷の評価-カスタマーハラスメント-


2023年9月1日に精神障害の労災認定基準が改正されました。新基準では、心理的負荷表の具体的出来事にカスタマーハラスメントが追加されました。

カスタマーハラスメント

 カスタマーハラスメント(カスハラ)を明確に、定義することはできません。厚労省が公表している対策マニュアルは、以下のように定義しています。

カスタマーハラスメントの定義

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの

顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた

 精神障害の労災認定基準では、出来事の類型⑥対人関係に、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」ことが、心理的負荷表の具体的出来事として追加されました。

 認定基準のいう「著しい迷惑行為」とは、暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等のことです。通常のクレームは、含まれません。

カスハラの心理的負荷の強度

 精神障害の労災認定基準では、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」ことの平均的な心理的負荷の強度はⅡとされています。したがって、認定基準が想定しているカスハラでは、精神障害は労災と認定されません。

カスハラの心理的負荷の総合評価の視点

 カスハラの心理的負荷を評価する視点として、以下の点が挙げられています。

カスハラの心理的負荷の総合評価の視点

①迷惑行為に至る経緯や状況等

②迷惑行為の内容、程度、顧客等との職務上の関係等

③反復・継続など執拗性の状況

④その後の業務への支障等

⑤会社の対応の有無、内容、改善の状況

カスハラの心理的負荷の強度が「強」となる例

 認定基準が心理的負荷の強度が「強」になる具体例として、以下のような出来事を挙げています。具体例からわかるように、非常にひどいカスハラでなければ、カスハラのみで労災と認定されることはありません。

カスハラの心理的負荷の強度が「強」となる例

(1)顧客等から、治療を要する程度の暴行等を受けた

(2)顧客等から、暴行等を反復・継続するなどして執拗に受けた

(3)顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を反復・継続するなどして執拗に受けた

(4)顧客等から、威圧的な言動などその態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を反復・継続するなどして執拗に受けた

(5)心理的負荷としては「中」程度の迷惑行為を受けた場合であって、会社に相談しても又は会社が迷惑行為を把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった

 (4)の「態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える」場合の例を認定基準では挙げていません。厚労省が公表しているカスハラ対策マニュアルでは、「要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動」の例として、①要求内容の妥当性に関わらず不相当とされる可能性が高いものと②要求内容の妥当性に照らして不相当と判断される場合があるものを挙げられています。

①要求内容の妥当性に関わらず不相当とされる可能性が高いもの

身体的な攻撃:暴行、傷害

精神的な攻撃:脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言

威圧的な言動

土下座の要求

継続的な、執拗な言動

拘束的な言動:不退去、居座り、監禁

差別的言動

性的な言動

従業員個人への攻撃、要求

②要求内容の妥当性に照らして不相当と判断される場合があるもの

商品交換の要求

金銭補償の要求

土下座を除く謝罪の要求

カスハラの心理的負荷の強度が「中」となる例

 認定基準が心理的負荷の強度が「中」となる具体例として、以下のような出来事を挙げています。認定基準が想定している通常のカスハラということになります。

カスハラの心理的負荷の強度が「中」となる例

(1)顧客等から治療の要さない程度の暴行を受け、行為が反復・継続していない

(2)顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を受け、行為が反復・継続していない

(3)顧客等から、威圧的な原動などその態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を受け、行為が反復・継続していない

 心理的負荷の強度が「強」に至らないものが、「中」の出来事になります。特に、反復・継続性を重視しているように思われます。

カスハラの心理的負荷の強度が「弱」となる例

 認定基準は、具体的な例は挙げずに、顧客等から、「中」に至らない程度の言動を受けたことという当然のことを「弱」の例として挙げています。


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