精神障害の労災認定基準の改正-2023年9月1日~-

2023年9月1日、精神障害の労災認定基準が改正されました。改正のポイントを取上げます。

精神障害の労災認定基準の改正

 2023年7月に「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討委員会」の報告書が取りまとめられたのを受け、精神障害の労災認定基準が改正されました(令和5年9月1日基発0901第2号)。

改正のポイント

 今回の改正のポイントは、以下の4つです。

精神障害の労災認定基準改正のポイント

①心理的負荷表の具体的出来事に、カスタマーハラスメントが追加

②心理的負荷表の具体的出来事に、感染症等の病気の危険性が高い業務に従事したことが追加

③心理的負荷の強度の具体例を明記

④精神障害が悪化した場合の業務起因性の判断の変更

心理的負荷の具体的出来事にカスタマーハラスメントが追加

 心理的負荷の具体的出来事に、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」が追加されました。いわゆるカスタマーハラスメントです。カスタマーハラスメントの平均的な心理的負荷の強度は「Ⅱ」となっています。

心理的負荷の強度が「強」になる例

 カスタマーハラスメントで、心理的負荷の強度が「強」になる例として、以下が挙げられています。

 (1)顧客等から、治療を要する程度の暴行等を受けた

 (2)顧客等から、暴行等を反復・継続するなどして執拗に受けた

 (3)顧客等から、人格や人間性を否定するような言動を反復・継続するなどして執拗に受けた

 (4)顧客等から、威圧的な言動などその態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える著しい迷惑行為を反復・継続するなどして執拗に受けた

 (5)心理的負荷としては「中」程度の迷惑行為を受けた場合であって、会社に相談しても又は会社が迷惑行為を把握していても適切な対応がなく、改善がなされなかった

心理的負荷表の具体的出来事に、感染症等の危険性が高い業務に従事したことが追加

 心理的負荷の具体的出来事に、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」ことが追加されました。平均的な心理的負荷の強度は「Ⅱ」となっています。

心理的負荷の強度が「強」になる例

 新興感染症の感染の危険性が高い業務等に急遽従事することとなり、防護対策も試行錯誤しながら実施する中で、施設内における感染等の被害拡大も生じ、死の恐怖等を感じつつ業務を継続した場合が、心理的負荷の強度が「強」になる例として挙げられています。

心理的負荷の強度の具体例を明記

 心理的負荷表の具体的出来事について、心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」になる具体例が挙げられています。今回の改正で、具体例が拡充されています。また、一部の心理的負荷の強度しか具体例が挙げられていなかった具体的出来事について、他の強度の具体例が明記されています。

 さらに、パワハラについて、性的指向・性自認に関する精神的攻撃等と含むことが明記されています。

精神障害の悪化の取扱いの変更

 精神障害が治ゆする前に職場復帰し、業務による心理的負荷を受けたことにより、精神障害の症状が悪化した場合、労災でどのように扱われるのか?という問題があります。今回の改正で、労災と認められる範囲が拡大されます。

従前の取扱い

 精神障害が悪化した場合、これまでは、「特別な出来事」に該当する事実があり、その後おおむね6か月以内に自然的経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合に限って、悪化した部分は、労災と認めるという取扱いでした(精神障害の再発・悪化と労災の認定参照)。

2023年9月1日~の取扱い

 精神障害が悪化した場合、悪化前の6か月以内に、特別な出来事がなくても、業務による強い心理的負荷によって、悪化した場合は、悪化した部分について、労災と認められるようになります。労災と認められる範囲は拡大されます。