労災事故の典型である陸上貨物運送業における転倒事故を取上げます。
荷物を運んでいる最中に滑った…

荷物を運んでただけなのに、ちょっと足を滑らせただけで骨折しちゃって…

運送業って、転倒が多い職種なんだよ。労災の対象になるケースも多いんだ。
陸上貨物運送業における転倒事故
厚労省が公表した令和6年の「労働災害発生状況」によると、転倒事故の死傷者数は36,378人でした。陸上貨物運送業における転倒事故の死傷者数は、2,980人でした。陸上貨物運送業における転倒事故は、労災事故の典型といえます。
陸上貨物運送業における転倒事故の主な要因は、以下のとおりです。
陸上貨物運送業における転倒事故の主な要因
①荷役作業場所の整理整頓の不備
②床面の段差、滑りやすい床
③水や油などの床の汚れ
④荷物で両手がふさがった状態での作業
⑤荷物の重量・形状
⑥長時間の運転による疲労
陸上貨物運送業における転倒事故は労災の対象?
労災と認定されるには、①業務遂行性があることを前提に、②業務起因性があることが必要です。
労働者が業務に従事していれば、業務遂行性が認められます。業務起因性は、業務に内在する危険が現実化したという要件です。
荷役作業中に発生した転倒事故は、業務遂行性・業務起因性ともに認められます。
主な労災保険の補償
陸上貨物運送業における転倒事故で労災と認定された場合の主な労災保険の補償は、以下のとおりです。
治療費
労災保険から治療費が支給されます。労災の指定病院で治療を受けた場合は、病院へ直接、支払われます。労災の指定病院以外で治療を受けた場合は、いったん、治療を立替える必要があります。

詳しくは、以下の「労災の治療費」を参照
休業補償
療養のため仕事ができなかった場合、休業補償給付が支給されます。休業補償給付は、給付基礎日額の60%が支給されます。休業補償給付とは別に、特別支給金として給付基礎日額の20%が支給されます。

詳しくは、以下の「休業(補償)給付」を参照
障害補償給付
後遺障害が残った場合、後遺障害等級に応じて障害補償給付が支給されます。1級~7級は年金、8級~14級は一時金として支給されます。

詳細は、以下の「障害(補償)給付」を参照
陸上貨物運送業における転倒事故のよくある誤解と注意点
陸上貨物運送業における転倒事故について、よくある誤解と注意点をまとめました。
| よくある誤解 | 正しい理解 |
| 自分の不注意で転倒したから労災じゃない | 労働者に不注意があっても労災になる |
| 会社が労災と認めないと申請できない | 労災と認めるのは労基署、労働者が労基署に労災保険の請求できる |
| 転倒事故は大した事故じゃない | 骨折の場合、後遺障害が残る可能性がある |
| 運送業は個人事業主だから関係ない | 実態が雇用契約の場合は労災の対象 特別加入してれば労災の対象 |
陸上貨物運送業における転倒事故に遭った際のチェックリスト
陸上貨物運送業における転倒事故に遭った際の行動チェックリストです。参考にしてみてください。
| チェック項目 | 確認ポイント |
| □作業中の転倒事故 | 日時、場所、作業内容、事故状況を記録 写真も撮る |
| □医師の診断書の入手 | 医師に業務中の事故と伝える 労災指定病院の場合は診断書は不要 |
| □雇用契約の有無 | 実態は雇用契約ではないか?委託契約等の内容を確認 |
| □労災保険の請求に必要な資料・書類の入手 | 労基署や弁護士に相談し確認 |
| □労災保険の請求 | 会社が労災保険の請求をしてくれない場合は自分でする |
| □弁護士に相談 | 特に会社が労災保険の請求をしてくれない場合は弁護士に相談するのをおすすめ |
陸上貨物運送業における転倒事故の事例
40代男性ドライバーが荷役作業中に足を滑らせて転倒し、膝を骨折した。会社は「自己責任」として労災申請に消極的だったが、本人が直接申請して労災認定。3か月の休業補償を受けながら治療し、復職できた。
陸上貨物運送業における転倒事故でケガをされた方へ
陸上貨物運送業における転倒事故は、労災事故の典型です。直ちに、会社に報告し、病院で治療を受けましょう。そして、日時・場所・作業内容といった事故状況を整理し、労災保険の請求をしましょう。
会社が労災保険の請求の手続きに協力的でない場合は、一人で悩まず、弁護士に相談することで、労災保険の補償を受けられる可能性が広がります。法律事務所エソラは、労災の初回相談は無料です。

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