転倒事故は労災事故の典型です。建設業における転倒事故を取上げます。
建設現場で転んだ…

ちょっと足を引っかけて転んじゃったんだけど…現場の人たちに、「そんなもん自分の不注意だろ」って言われて…。
これって、労災になるのかな?

なるかならないかは、現場の空気じゃなくて、制度で決まるんだよ。
建設業の現場では転倒が意外と多いし、労災の対象になるケースもたくさんあるんだ。
労災事故で最も多い転倒事故
厚労省が発表した「令和6年度の労働災害の発生状況の分析等の概要」によると、転倒事故の死傷者数は36,378人で1位となっています。建設業においても転倒事故の死傷者数は、1,658人と死傷者数の多い事故類型です。
建設業特有の転倒原因
建設業は、障害物の多い建設現場で作業を行います。そのため、転倒のリスクが高い環境にあります。
建設現場での転倒要因
足場
仮設階段
鉄筋
段差
未舗装地面・道路
また、屋外での作業なので、雨・泥・砂利なども転倒の原因になります。
建設業における転倒事故の労災認定
労災と認定されるには、①業務遂行性があることを前提に、②業務起因性があることが必要です。
労働者が業務に従事していれば、業務遂行性が認められます。業務起因性は、業務に内在する危険が現実化したという要件です。
建設現場での作業中に発生した転倒事故は、業務遂行性・業務起因性ともに認められます。
主な労災保険の補償
建設業における転倒事故で労災と認定された場合の主な労災保険の補償は、以下のとおりです。
治療費
労災保険から治療費が支給されます。労災の指定病院で治療を受けた場合は、病院へ直接、支払われます。労災の指定病院以外で治療を受けた場合は、いったん、治療を立替える必要があります。

詳しくは、以下の「労災の治療費」を参照
休業補償
療養のため仕事ができなかった場合、休業補償給付が支給されます。休業補償給付は、給付基礎日額の60%が支給されます。休業補償給付とは別に、特別支給金として給付基礎日額の20%が支給されます。

詳しくは、以下の「休業(補償)給付」を参照
障害補償給付
後遺障害が残った場合、後遺障害等級に応じて障害補償給付が支給されます。1級~7級は年金、8級~14級は一時金として支給されます。

詳細は、以下の「障害(補償)給付」を参照
よくある誤解と注意点
建設業における転倒事故に関して、よくある誤解をまとめました。
よくある誤解 | 正しい理解 |
転倒なんて自分の不注意だから労災にならない | 労働者の不注意で発生した事故も労災になる |
軽いケガだから労災請求しない | 労災事故で健康保険は使えないので、労災保険の請求をする |
下請けだから対象外 | 建築現場では、工事全体を一つの事業体とみなし、元請会社が労災保険に加入しているので、元請会社の労災保険が適用される |
現場がややこしくなるから黙ってる | 労災自体は会社に迷惑をかける制度ではない |
建設業における転倒事故に遭った際のチェックリスト
建設業における転倒事故に遭った際の行動チェックリストです。参考にしてみてください。
チェック項目 | 確認ポイント |
□作業中の転倒事故 | 日時、場所、作業内容、事故状況を記録 |
□医師の診断書の入手 | 労災の指定病院の場合は不要 |
□会社・元請会社に報告 | 会社が労災保険の請求をしてくれるか確認 |
□労災保険の請求に必要な資料・書類の入手 | 労基署や弁護士に相談し確認 |
□労災保険の請求 | 会社が労災保険の請求をしてくれない場合は自分でする |
□弁護士に相談 | 特に会社が労災保険の請求をしてくれない場合は弁護士に相談するのをおすすめ |
建設業における転倒事故でケガをされた方へ
建設業における転倒事故は、労災事故の典型です。首や腰のむち打ちは、一見すると軽傷でも後遺障害の対象になるかもしれません。まずは、会社に報告し、病院で治療を受けましょう。そして、日時・場所・作業内容といった事故状況を整理し、労災保険の請求をしましょう。
会社が労災保険の請求の手続きに協力的でない場合は、一人で悩まず、弁護士に相談することで、労災保険の補償を受けられる可能性が広がります。法律事務所エソラは、労災の初回相談は無料です。

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