通勤途中で事故に遭った場合、通勤災害として労災保険の対象になります。通勤途中に寄り道して、事故に遭った場合も通勤災害と認められるのでしょうか?
合理的な経路の逸脱又は中断
通勤災害の認定で問題になることが多いのが、合理的経路の逸脱又は中断です。
通勤災害の要件については、以下の通勤災害と労災を参照
逸脱は、通勤途中で通勤と無関係な目的で合理的経路を逸れることをいいます。中断は、通勤途中で通勤と関係のない行為を行うことをいいます。
逸脱又は中断の間は、通勤と認められません。さらに、逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるやむを得ない事由により行う必要最小限度のものに該当しない限り、逸脱又は中断の後も通勤と認められません(労災保険法7条3項)。
ただし、公衆トイレの利用など労働者が通勤途中で行うささいな行為は、逸脱又は中断としては扱われません。
日常生活上必要な行為
労災保険法施行規則8条が、日常生活上必要な行為について規定しています。以下の5つが、日常生活上必要な行為として規定されています。
①日用品の購入その他これに準じる行為
帰宅途中に総菜等を購入する行為、独身者が食堂に食事に立ち寄る行為、クリーニング店に立ち寄る行為、理美容院に立ち寄る行為などが該当します。
②職業訓練、教育訓練等を受ける行為
職業能力開発校で行われる職業訓練のことです。教育としては、学校教育法上の学校を想定しています。
③選挙権の行使その他これに準じる行為
最高裁裁判官の国民審査、住民の直接請求権の行使なども含まれます。
④病院又は診療所において診察又は治療を受ける行為
柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師等の施術も含まれます。
⑤要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母、同居し、かつ、扶養している孫・祖父母・兄弟姉妹の介護
羽曳野労働監督署長事件(大阪高裁平成19年4月18日判決)を受け、日常生活上必要な行為として追加されました。
やむを得ない事由により行う最小限度
「やむを得ない事由により行う」とは、日常生活の必要から通勤途中で行う必要があることを意味します。「最小限度」とは、逸脱又は中断の原因となった行為の目的達成のために必要とする最小限度の時間、距離等を意味します。
たとえば、病院での診察後に、長時間、談笑していると、最小限度とはいえません。したがって、その後の災害は、通勤災害と認められません。