厚労省の通達をもとに複数事業労働者の休業補償給付の支給要件に関する問題をまとめておきます。
複数事業労働者の労災保険給付
労災保険法の改正により、2つ以上の事業に使用される労働者である複数事業労働者の労災保険給付が新設されました(労災保険法7条1項2号)。
詳細は、以下の「複数事業労働者の労災保険給付」を参照
労災保険給付の内、複数事業労働者の休業補償給付の支給要件についてまとめておきます。
休業補償給付の支給要件
休業補償給付の支給要件は、以下の3つです(労災保険法14条1項本文)。
休業補償給付の支給要件
①療養のため②労働することができないために、③賃金を受けない日
詳しくは、以下の記事参照
以下、複数事業労働者について、問題になりそうな②と③の要件について厚労省の通達の考えを紹介します。
②労働することができない
労働することができないという要件は、労災事故前の仕事ができないということではありません。一般的に働けない状態を意味します。したがって、軽作業に従事することで症状の悪化が認められない場合や実際に軽作業に従事した場合は、この要件を満たしません。
複数事業労働者の場合は、すべての事業場における就労状況等を踏まえて判断されます。
複数事業労働者が、一つの事業場で労働者として就労している場合は、当然、この要件は満たしません。ただし、この場合でも他方の事業場に、通院等のために、所定労働時間の全部又は一部について労働できない場合は、この要件を満たす場合があります。
③賃金を受けない日
賃金を受けない日は、賃金の全部を受けない日と一部を受けない日の両方を含みます。
賃金の一部を受けない日は、以下の2つの場合と解されています。
賃金を受けない日
(1)所定労働時間の全部について労働できない場合で、平均賃金の60%未満の賃金しか受け取っていない日
(2)通院等のため所定労働時間の一部について労働できない場合で、一部休業した時間について賃金を全く受けない又は平均賃金と実労働に対して支払われる賃金の差額の60%未満しか受けない日
複数事業労働者の場合、一つの事業場で有給等を消化することで平均賃金60%以上の賃金の支払いを受けていても、他の事業場では無給で休業している場合が考えられます。複数事業労働者の場合は、事業場ごとに、この要件を満たすか?を判断し、一部の事業場でも賃金を受けない日に該当すれば、この要件を満たします。