通勤途中の事故は、労災の通勤災害です。しかし、通勤途中の事故でも労災の業務上災害に該当する場合があります。
通勤途中の災害は業務上災害ではない
通勤は労働者の業務に必然的に伴うもので、業務と密接に関連しているといえます。しかし、通勤は、使用者の支配管理下にあるわけではなく、業務遂行性は認められません。
したがって、通勤途中の災害は業務上災害ではありません。ただし、労災保険は、通勤災害として労働者を保護しています。
業務上災害と通勤災害では、業務上災害の方が労働者に有利
労災保険の給付に関しては、業務上災害と通勤災害では、ほぼ違いはありません。労基法との関係では、業務上災害の方が労働者に有利になっています。
詳しくは、以下の業務上災害と通勤災害の違いを参照
通勤途中の災害が業務上災害になる場合がある
通勤途中の災害であっても、業務の性質を有するものは、業務上災害と認定されます。通勤途中の災害が業務上災害と認定されるのは、2つの場合があります。
①事業主が専用の交通機関を労働者の通勤の用に供している場合
交通機関の利用に起因する災害は、業務上災害と認定されます。交通機関の構造上、機能上、管理上、運行上の欠陥に起因するものが該当します。
専用の交通機関とは、労働者のための専用の交通機関であるという趣旨です。事業主が所有している必要はなく、第三者に運行を委託している場合も含まれます。
②出勤途中または退勤途中で用務を行う場合
この場合に、業務遂行性があるかどうかは、次の観点から判断されます。
業務遂行性の判断
(1)事業主の命令があったかどうか
業務命令がない場合、労働者の職務上当然に行うことが予想させる用務であったか?
(2)用務の遂行に当たり、通常の通勤時間、順路、方法等と著しく異なった時間、順路、方法等による必要があったかどうか