使用者の安全配慮義務は、労働安全衛生法に関係していますか?
労働安全衛生法上の義務
労働安全衛生法が、事業者に課している主な義務に、以下のものがあります。
安衛法上の義務
①安全衛生管理体制の促進
安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者の選任義務を課し安全衛生監理体制作りを促進する義務
②労働者の危険・健康障害を防止するための措置をとる義務
③安全衛生教育、就業規則の作成
④健康の保持・促進の措置をとる義務
安全配慮義務と労働安全衛生法の関係
下級審の裁判例の中には、①労働安全衛生法の義務を安全配慮義務の内容と解しているものと②労働安全衛生法は直ちに労働契約の内容となるわけではないが、安全配慮義務の内容を検討するに当たり、基準として考慮するものがあります。
安全配慮義務の具体的な内容は、安全配慮義務が問題となる具体的状況によって異なります。
安全配慮義務については、以下の記事参照
安全配慮義務について(労災の損害賠償)
労災の発生について、使用者である会社に安全配慮義務違反がある場合、労働者は会社に対し損害賠償請求できます。安全配慮義務違反について解説します。
安全配慮義務の内容に関して、労働安全衛生法が、基準として機能することが考えられます。
たとえば、労働者が高血圧で治療中の場合、使用者は、過重労働によって高血圧が悪化しないように、労働時間・休憩・休日等の適正な労働条件を確保し、労働時間や業務の軽減、就業場所の変更といった適切な措置を講じる義務を負います。このとき、労働安全衛生法の一般健康診断及びそれを踏まえた事後措置義務が、安全配慮義務の内容として考慮されます。
労働安全衛生法の義務が、安全配慮義務の内容だとすると、使用者が労働安全衛生法を遵守している場合は、安全配慮義務違反はないということになります。一方、労働安全衛生法の義務が、安全配慮義務の内容の基準になると解すと、労働安全衛生法の義務を遵守していても、使用者には、なお、安全配慮義務違反に問われる可能性があります。
労働安全衛生法の義務は、作業環境や職場環境を主眼にしており、使用者が労働契約に基づく付随的な義務として安全配慮義務は、より広いと考えられています。