紫外線による前眼部疾患・皮膚疾患の労災認定基準
労災の業務上疾病の内、紫外線による前眼部疾患・皮膚疾患の労災認定基準を取上げます。
紫外線による前眼部疾患・皮膚疾患
労基法施行規則は、紫外線にさらされる業務による前眼部疾患・皮膚疾患を業務上疾病として例示列挙しています(労基法施行規則別表第1の2第2号1)。
紫外線ばく露により前眼部疾患・皮膚疾患が発生しやすい業務
紫外線へのばく露は,戸外の太陽,太陽灯,アーク溶接,プラズマトーチ,試験研究,印刷工程,乾燥・保存肯定,非破壊検査,環境試験室,医療用器材,化学物質の処理・製造工程等で見られます。
一般に,紫外線ばく露によって,眼や皮膚の疾病が生じやすい作業として,以下のものを挙げることができます。
①アーク溶接・切断作業
②ガスによる溶接・切断作業
③アーク灯・水銀アーク灯の操作
④殺菌・検査・医療関係等の作業
⑤屋外における観測・農林水産業
前眼部疾患
前眼部疾患は,主として結膜又は角膜に起こる疾病です。結膜炎と角膜表層炎等の疾患があります。
紫外線にばく露されたり,短時間でも強い紫外線にばく露されたりすると,照射後6時間から12時間で眼痛・羞明・異物感等の自覚症状が出現します。また,眼瞼に浮腫,結膜に充血が見られ,角膜に多発性の上皮びらん・慢性表層角膜炎が見られることがあります。
皮膚疾患
紫外線にばく露による皮膚への影響は,日焼けです。屋外労働者等が紫外線にばく露され続けると,乾性,褐色,非弾力性で皺のある皮膚になったり,顔面の毛細血管拡張,頂部の線用皹裂等の皮膚反応が生じます。
労災認定基準
紫外線による前眼部疾患・皮膚疾患が労災と認定されるには,次の4つの要件を充足していることが必要です。
(1)当該作業条件,作業従事期間等からその有害程度が当該疾病発生原因とするに足りること
(2)当該疾病に特有な症状又は医学的経験則上,通常起こり得ると認められる症状が出現していること
(3)業務に起因しない他の原因によるものでないこと
(4)医学上療養が必要と認められる症状であること
紫外線角膜炎は,多くは数日で治ゆしますが,症状経過から一般の急性角膜炎と誤診されるやすいので,職歴,作業の種類,作業上の状態,光線の種類・性質・強さ,光線へのばく露時間,光線へのばく露と症状発現までの時間的関係,既往歴,臨床症状等を総合考慮して的確な鑑別を行う必要があるとされています。