労災の周辺知識として、ストレスチェックの概要を説明します。
ストレスチェック
労働安全衛生法が改正され、1年に1回、ストレスチェックを実施することが事業者の義務となっています(66条の10・規則52条の9第1項)。
ただし、労働者数が50人未満の事業所については当分の間努力義務とされています(附則4条・13条1項)。
ストレスチェックの実施
ストレスチェックの実施者は、労働安全衛生規則で定められています。医師・保健師の他に一定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士が実施者です(52条の10第1項)。もっとも、事業場の状況を日ごろから把握している産業医等が、実施者になることが望ましいとされています。また、労働者について人事権を有する者は、実施者にはなれません(52条の10第2項)。
ストレスチェックの検査項目は、職業性ストレス簡易調査票を参考に、標準的な項目が示されています。また、中小規模事業場向けに簡易な項目も示されています。
ストレスチェックの対象
ストレスチェックの対象となる労働者は、①無期契約の労働者又は有期契約の労働者で1年以上使用されることが予定されている者及び②更新によって、1年以上使用されている労働者のうち、1週間の労働時間数が事業場における同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上の者とされています(平成19年10月1日基発第1001016号参照)。
ストレスチェックの検査結果
ストレスチェックの検査結果は、検査を実施した医師等から労働者本人に直接、通知されます(法66条の10第2項前段、規則52条の12)。
労働者本人の同意なしに、検査結果を事業者に提供することは禁止されています(法66条の10第2項後段)。労働者の同意は、検査結果を通知した後に、労働者ごとに個別に同意の有無を確認する方法に限られています。つまり、事前の同意やストレスチェック実施時の同意は、不適当とされています。なお、後述の労働者から面接指導の申出があった場合は、同意があったものとみなされます。
面接指導の実施
ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施する義務を負っています(法66条の10第3項前段)。
面接指導の結果に基づき、事業者は医師から意見を聴き、必要に応じ就業上の措置を講じることが業務付けられています(法66条の10第5項)。たとえば、就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少などが就業上の措置に該当します。
不利益処分の禁止
労働者の面接指導の申出を理由とする不利益な取扱いは、禁止されています(法66条の10第3項後段)。
したがって、ストレスチェックの結果により体調不良が見られる場合であっても、そのことを人事考課上不利に査定したり、解雇したりすることは、合理的な理由がない限り、不利益処分と判断される可能性があります。
また、ストレスチェックを受けないことを理由として不利益処分も禁止されています。