仕事中に転倒し骨折して治療を続けたが後遺症が残った場合、労災保険で補償させるのか?を解説します。
骨折後、後遺症が残った…

職場で転倒し骨折、リハビリ後も手首がうまく動かない…

労基署から症状固定って言われたけど、もう労災保険で補償されないの?

労災保険には障害補償給付があるよ。
労災保険の後遺障害と認められれば、補償が受けられるんだ。
職場で転倒し骨折した場合、業務災害として労災保険から治療費などの給付を受けられます。労災保険での治療は、症状固定までです。症状固定と判断された時点で、後遺症が残っている場合、後遺症が労災保険の後遺障害に該当すれば、障害補償給付を受けれます。
後遺症と労災保険
事故によるケガを治療をしても治らなずに身体に何らかの症状が残ることがあります。一般的には、後遺症といいます。後遺症が全て労災保険の障害補償給付の対象になるわけではありません。障害補償給付の対象となるのは、後遺障害です。
後遺障害とは?
労災保険の後遺障害は、労働者が業務上負傷し、治った場合において、その身体に残存する障害のことです。実際には、労災保険の基準を満たした後遺症が後遺障害だと考えればいいでしょう。

「治った」というのは、症状固定という意味です。
労災保険の後遺障害
後遺障害が残った場合、障害の程度に応じて、障害補償給付が支給されます。労災保険では、「障害等級認定基準」という通達があり、この認定基準に即して、後遺障害の等級認定が行われます。

後遺障害の等級認定については、以下の「労災の後遺障害の認定」を参照
転倒による骨折の後遺障害
転倒による骨折の後遺障害としては、骨折の箇所にもよりますが、以下の後遺障害が考えられます。
転倒による骨折の後遺障害
①関節が動かない、動かしづらい:機能障害
②骨の癒合不全:変形障害
③痛み・痺れ:局部の神経症状
以下、上肢の後遺障害について解説します。
機能障害
骨折が原因で、関節の可動域が制限される後遺障害です。
等級 | 障害の程度 |
1級の7 | 両上肢の全廃 |
5級の4 | 1上肢の全廃 |
6級の5 | 1上肢の3大関節中の2関節の用廃 |
8級の6 | 1上肢の3大関節中の1関節の用廃 |
10級の9 | 1上肢の3大関節中の1関節の著しい機能障害 |
12級の6 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能障害 |
関節の機能障害は、目視では確認できません。後遺障害の認定には、骨折後の癒合不全、靱帯などの軟部組織の損傷、神経損傷といった器質的損傷があることが必要です。

詳細は、以下の「関節の機能障害」を参照
変形障害
骨折後、骨が正常にくっつかずに不自然に曲がったまま固まったり、変形してひっつく障害です。
等級 | 障害の程度 |
7級の9 | 1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残す |
8級の8 | 1上肢に偽関節を残す |
12級の8 | 長管骨に変形を残す |

詳細は、以下の「上肢・下肢の変形障害の後遺障害認定のポイント」を参照
局部の神経症状
骨折後、痛みや痺れが残る障害です。
等級 | 障害の程度 |
12級の12 | 局部にがん固な神経症状を残す |
14級の9 | 局部に神経症状を残す |
12級と14級の違いは、画像所見の有無です。

機能障害と局部の神経症状の両方が認められる場合、局部の神経症状は機能障害に吸収されます。
障害補償給付の内容
後遺障害の等級に応じて、1級~7級は年金、8級~14級は一時金が支給されます。

詳細は、以下の「労災保険の障害(補償)給付」を参照
転倒による骨折の後遺障害のポイント
転倒による骨折の後遺障害のポイントをまとめました。
画像所見の有無が重要
画像所見の有無が重要です。
関節の機能障害は、どのくらい可動域が制限されているか?に注目しがちです。しかし、関節の可動域制限の原因となる器質的損傷がなければ後遺障害と認められません。画像所見が重要です。
痛み・痺れの場合も画像所見の有無で、12級と14級のどちらになるか?が決まります。
関節の可動域の測定
労基署に提出する診断書に記載する関節の可動域の測定値も重要です。
労災保険では、日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会が定めた「関節可動域表示ならびに測定法」に準拠した「関節可動域の測定要領」に基づいて可動域の測定をします。
しかし、医師によっては、「関節可動域表示ならびに測定法」によらずに、可動域の測定を行う場合があります。
転倒による骨折で後遺症が残りそうな方へ
転倒による骨折で後遺症が残った場合、労災保険の障害補償給付を受けられる可能性があります。適切な後遺障害の等級認定を受けるためには、弁護士に相談することをおすすめします。
法律事務所エソラは、労災の初回相談は無料です。

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