労災保険の請求者は労働者

 労災保険を請求は,労働者又はその遺族です。事業主である会社が請求者ではありません。請求者である労働者又はその遺族が,事業所(勤務先)を管轄する労基署長に対して,労災保険の給付請求をする必要があります。

会社は手続きを代行しているだけ

 実際には,事業主である会社が,労働者に代わって,労災保険の請求を代行することがよくあります。労災保険の請求書には,「事業主の証明」や「平均賃金」を記載するなど,会社が手続きをしてくれれば,スムーズに行きます。

 ただし,会社は,あくまでも手続きを代行してるにすぎず,請求者は労働者です。請求書に労働者の署名・押印が必要です。署名・押印の前に,労働者としては,「災害の原因及び発生状況」の記載が自分の認識と違ってないか等の確認はしておくべきでしょう。「災害の原因及び発生状況」の記載が事実と異なると,労災の認定や会社への損害賠償請求の際に不利になることがあります。

会社が手続きを代行してくれない

 会社が種々の理由をつけて,労災請求の手続きを代行してくれないこともよくあります。請求者はあくまでも労働者又はその遺族なので,その場合は,労働者が自分で手続きをすればいいのです。

 労災保険の請求書には,「事業主の証明」を会社にしてもらう欄があります。会社が手続きに協力してくれない場合,事業主の証明がもらえないことがあります。

 会社が事業主の証明を拒否する場合は,会社との交渉の経緯を文書にして,労基署に提出すれば,労基署が受理しないということはありません。また,休業補償給付の請求に当たって,平均賃金がわからに場合も空欄で提出しても労基署で受理されないことはないでしょう。

会社としての対応は?

 会社が事業主の証明を行わないとしても,結局は,労災の請求はできてしまうので,まったく意味がありません。労働者災害補償保険法施行規則23条は,事業主は,労働者が労災保険給付請求等の手続きにあたって助力,証明することを義務づけ,事業主の証明を求められれば,すみやかに証明しなければなりません。

 そもそも,労災保険の給付対象となるか否かは,労働基準監督署長が種々の調査を経た上で判断します。「事業主の証明」は,労災保険の給付対象であることを認めるものではありません。また,事業主は,労働基準監督署長に対して意見を申し出ることができます(同規則23条の2)。

 したがって,会社としては,労災保険の請求に協力し,「災害の原因及び発生状況」の認識が労働者と違うのであれば,別途,意見書を提出するという対応を取るべきです。

 労災保険から給付を受けれれば,会社に対して損賠請求まではしないという労働者も多く,会社が手続きに協力しないことで,かえって,会社の損害賠償請求の契機となっている面もあるのではないでしょうか。