労災保険の消滅時効と後続請求の関係について取り上げます。

労災保険の消滅時効

 労災保険の消滅時効は,給付の内容によって,2年又は5年の消滅時効にかかります(労災保険の消滅時効参照)。

 休業補償給付の場合,最初の休業補償給付の請求の結果,不支給決定がなされ,審査請求等の不服申立てを行っている間に,初回請求以降の休業補償給付について,消滅時効にかかるのではないかという問題が生じます。

平成8年11月19日付け労働省労働基準局労災管理課長,同補償課長発出の事務連絡「労災保険給付に係る後続請求の取扱いについて」

 ある労災請求に対し労基署長が不支給処分を行った場合において,当該労災請求(先行請求)と判断の基礎(業務起因性,労働者性等に係る事実)を共通にするその後の労災請求(後続請求)の時効については,先行請求に係る不支給処分が審査請求,再審査請求又は訴訟により取り消されたときは,後続請求について,請求権の時効期間の経過を理由として,当該請求権が時効消滅したものとして取り扱うことが不合理である旨の判断を示しています。

 このように取扱うことの根拠として同裁決は,次の各点を指摘しています。

 (1)後続請求については,行政実務上,先行処分と同事案として直ちに不支給処分が行われ,実質的な審査がなされないという実態があること。

 (2)後続処分の形式的確定を回避するためには,後続処分についてもそれぞれ審査請求等を重ねていく必要があり,請求人側の過大な負担が強要されること。

 (3)このような形式的後続請求を行っているか否か,及び後続処分に係る審査請求等を行っているか否かで保険給付の請求権の存続が左右されることが合理的であるとはいえないこと。

 なお,上記の考え方は,判断の基礎を共通にする限りにおいて,先行請求と後続請求が労災保険法における異なる種類の給付に係るものである場合にも妥当するものであり,同種給付間に限って妥当すると解するのは合理的ではないと解されています。例えば,先行請求が療養補償給付の請求で,後続請求が休業補償給付の請求であるような場合も妥当します。

 また,同裁決は,先行処分が取り消された場合,いつまでに後続請求をすべきかという点については,先行処分の取消し後遅滞なく後続請求が行われている限りにおいて,時効による権利消滅を認めるのは著しく不合理であるとしています。