家族が労災事故で働けなくなると、「収入ゼロになったらどうしよう?」「生活費どうやって出すの?」そんな不安がよぎります。生活を補償する労災保険の給付について説明します。
家族が労災事故で働けなくなった

先日、夫が仕事中に機械に腕を挟まれて入院してます。
働けないから収入がなくなるんじゃないかって、どうしたら…

労災と認定されれば、労災保険から給付が出ます。
労災保険にどんな給付があるかを整理しましょう。
生活を補償する労災保険の給付
労働者が、仕事中の事故や通勤途中の事故が原因で、働けなくなった場合、労災保険の給付を受けることができます。ここでは、仕事中の事故や通勤途中の事故でケガをした場合の労災保険の給付について、まとめました。
①療養(補償)給付
病院の治療費が労災保険から支払われます。
病院が労災指定病院の場合は、病院が直接、労基署に請求するので、労働者は窓口で支払いをする必要はありません。
労災指定病院ではない場合は、いったん、労働者が窓口で支払いをした後、支払った治療費を労基署に請求します。
②休業(補償)給付
療養のために、仕事ができなくなった場合、労災保険から休業(補償)給付が支給されます。給料の代わりです。
支給されるのは、給付基礎日額の60%です。さらに、特別支給金として給付基礎日額の20%が支給されます。したがって、合計で給付基礎日額の80%が支給されます。
給付基礎日額は、労災事故前の3か月の平均賃金を元に計算します。ボーナスは平均賃金に算入されません。
③傷病(補償)給付
ケガの程度が重く後遺障害等級1級~3級の状態にあって、治療開始から1年6か月を経過しても、症状固定に至っていない場合は、以下の傷病(補償)給付が給付されます。
傷病(補償)給付が支給されると、休業(補償)給付は支給されません。
等級 | 傷病(補償)年金 | 傷病特別支給金 | 傷病特別年金 |
1級 | 給付基礎日額の313日分 | 114万円 | 算定基礎日額の313日分 |
2級 | 給付基礎日額の277日分 | 107万円 | 算定基礎日額の277日分 |
3級 | 給付基礎日額の245日分 | 100万円 | 算定基礎日額の245日分 |

算定基礎日額は、ボーナスを365日の日割り計算した金額です。ただし、上限があります。
④障害(補償)給付
ケガの治療の甲斐なく、症状固定に至り、後遺障害が残った場合は、障害の程度に応じて、障害(補償)給付が支給されます。
後遺障害等級の1級~7級は年金として支給されます。後遺障害等級の8級~14級は一回限りの給付です。
⑤介護(補償)給付
労働者に重篤な後遺障害が残り、介護が必要な状態になっている場合、一定の要件を満たすと、介護(補償)給付を受けられます。
どうすれば、労災保険の給付を受けれる?

労災保険が生活を補償する制度だとわかりました。
どうすれば、労災保険の給付を受けれるんですか?

労基署に請求書などの必要な書類を提出します。
労災と認定されれば、労災保険の給付を受けれます。
労災保険の請求
労災保険の給付を受けるには、労基署に労災保険の請求をしなければなりません。
労災保険の請求手続きは、会社が代行してくれることが多いです。しかし、会社によっては、労災保険の請求手続きに非協力的な場合もあります。会社が協力してくれなくても、労災保険の請求はできます。
会社が労災の手続きをしてくれない
労災事故が発生したのにもかかわらず、会社が労災の申請をしてくれないことがあります。会社が労災の申請をしない場合、労働者はどうすればいいのか?を解説します。
労基署に労災保険の請求をしてから、労災と認定されるまで1か月~3か月程度かかります。過労による脳・心臓疾患とストレスによる適応障害・うつ病などの心の病気の場合は、6か月を超えることも珍しくありません。
弁護士に相談を

労災保険の請求って、書類とか難しそう…

形式的な書類の書き方は労基署で教えてもらえます。
専門家である弁護士に相談するのもお勧めです。
労災保険の請求手続きがよくわからない、書類の書き方がわからない方は、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。特に、会社が労災保険の請求に協力的でない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。
労災保険と併用できる制度はある?
労災保険から様々な給付を受けることができます。しかし、労災保険の給付だけでは不十分です。たとえば、休業(補償)給付は特別支給金と併せて給付基礎日額の80%の支給です。しかも、ボーナスは反映されません。労災保険と他の制度と併用して、労災保険の不足分を補えないのでしょうか?
①健康保険
労災保険と健康保険は、二者択一の関係です。仕事中の事故や通勤途中の事故で労災となる場合は、健康保険は使えません。
過労による脳・心臓疾患とストレスによる適応障害・うつ病などの心の病気で、労災請求する場合は、労災の認定までに時間がかかるので、いったん、健康保険を使うこともあります。その場合、労災と認定された後に、精算する必要があります。

健康保険から労災保険への切替えは、以下の記事参照
健康保険から労災保険への切替え②
労災の対象であるにもかかわらず、健康保険を使って医療機関を受診した場合、健康保険から労災へ切替えの手続をしなければなりません。 健康保険から労災への切替えについて、厚労省の通達を紹介します。
②障害年金
労災で後遺障害が残る場合、厚生年金又は国民年金の障害年金の支給要件を満たせば、障害年金を受給することができます。
この場合、障害年金は全額受給できます。しかし、労災保険の障害(補償)給付等は、併給調整され全額受給できません。

詳細は、以下の「労災保険と社会保険との調整」を参照
③医療保険
労働者自身が契約している医療保険は、原則、保険金を受け取ることができます。ただし、約款で労災事故の場合を免責事由としている場合があります。労災事故が免責事由となっている保険の保険金は受け取れません。
④自動車保険
労災事故が交通事故の場合、事故の相手方の任意保険・自賠責保険から賠償金の支払いを受けます。労災保険と二重取りはできません。
会社へ損害賠償請求という選択
労災保険の給付の不足分を他の制度でカバーするのは、現実的には難しいです。労災事故の発生に会社の安全配慮義務違反がある場合は、会社に対して損害賠償請求できます。労災保険だけではなく、会社に対する損害賠償請求という選択もあることを覚えておいてください。
会社に対して損害賠償請求したい方
労災事故の被害に遭ったけど会社に損害賠償請求できる?損害賠償の相場は?労災事故で会社に対する損害賠償のよくある疑問を解説します。 労災事故で会社に損害賠償請求できる? 仕事中にケガをして、労災保険から給付を受けたけど、 […]
家族が労災事故で働けなくなった方へ
家族が労災事故で働けなくなり、「今後の収入はどうなるんだろう?」「今後の生活はどうなるんだろ?」と不安を抱えてらっしゃると思います。
労災保険という制度があります。どんな制度なのか、どんな給付が受けれるのか、制度を知ることが生活を守る第一歩になります。
ただ、不安を抱える中で、制度について調べたり、実際に労災保険の請求をしたりするのは、大変です。そんなときは、ぜひ、弁護士にご相談ください。弁護士は、労災保険の請求から訴訟まで全ての手続きに対応できます。
法律事務所エソラは、あなたの立場に立って、一つひとつ丁寧に対応しています。ご相談は無料です。どうぞお気軽にご連絡ください。

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